<中日2-3巨人>◇19日◇ナゴヤドーム

 王手!

 巨人は中日との今季最終戦を1点差で制し、優勝へのマジックナンバーを1とした。明日21日、リーグ連覇をかけて本拠地東京ドームでの広島戦に臨む。7回に登板した山口鉄也投手(29)は、6年連続60試合登板を達成し、自身が持つプロ野球記録を更新した。生涯巨人を誓った鉄人を終盤の番人に据え、一気に決める。

 けじめのマウンドも山口らしい場だった。平田の2ランで1点差とされた7回1死、今季60回目の出番が来た。YGマークの帽子を目深にかぶり表情は見えない。真っすぐに打者と対した。「競っている試合でも、いない試合でも、大事な登板に変わりはない」。王手をかける。自分の記録を塗り替える。潮目の登板でも淡々としていた。無失点で花を添えた。

 堂々と勝ちどきのバスに来た。「今年は、60試合登板が明確な目標だった」とハッキリ言った。「チームが勝てばいい」のコメントを何年も繰り返してきた。日本球界で最もタフな投手になると心境に変化が生まれた。「防御率もホールドも、まったく気にならなくなりましたね。試合数が多いということは、健康な証拠。健康でいられることに、僕は感謝しなくてはいけない」との境地に至った。「今年は連投が少ない。原監督が大切に使ってくれている」と愛情を知った。

 前夜、日本人投手のセーブ記録を更新した中日岩瀬の投球を見た。「やっぱりすごい。絶対にまねできないです」と尊敬の念を抱いた。同時に、同じ道程をたどっている自分に気付いた。帽子のYGマークを触り覚悟を吐き出した。

 山口

 巨人に拾ってもらっていなければ野球を続けられなかった。僕は巨人で野球を終える。岩瀬さんにはなれませんが、こうやって続けていく。

 野球人生をささげると金字塔に誓った。

 原監督は、山口の歩みをすべて見届けている。育成選手で迎え入れ、力量を見いだし、天職を与え、大切に使った。「何というか」と言って固まった。勝利会見では極めて珍しく、しばし押し黙った。「彼の姿勢は、何も変わっていない。慎重、という言葉…は違うな。いつも、目線が上からじゃない。勝負の怖さを知りつつ、真っすぐ、勇気を持って戦う。だから節制し努力する。どんな選手になっても変わらない」と丁寧に紡いだ。

 マジック1。ドームで舞う。「明確な目標ができた。分かりやすい」と、ついに大将が気勢を上げた。山口も続いた。「ドームで決められれば一番いい」。61試合目の登板を決めて胴上げに加わる。【宮下敬至】

 ▼巨人がM1で連覇へ王手をかけた。昨年の巨人は9月19日にナゴヤドームの中日戦に3-2で勝ってM1となり、移動日を挟んだ21日、東京ドームのヤクルト戦に勝ってV決定。過去、2年連続で同じ日に優勝を決めたチームは85、86年10月9日の西武だけ。西武は85年が藤井寺球場の近鉄戦、86年が西武球場のロッテ戦に勝って胴上げ。2年連続で同じ日に同じ球場で優勝を決めれば初めてだが、21日の結果は?

 ▼山口は08年からの登板数が67→73→73→60→72→60。これで6年連続60試合登板となり、自身が持つ連続60試合登板のプロ野球記録を更新。通算6度目の60試合登板も56~59、61、63年稲尾(西鉄)57、58、61~64年秋山(大洋)に並び最多となった。