<広島7-9巨人>◇17日◇マツダスタジアム
巨人大田泰示外野手(24)が土壇場で目覚めた。1勝1敗で迎えた2位広島とのシーソーゲームで、1点を追う8回無死一塁で今季1号、約2年ぶりとなる逆転決勝2ランを放った。松井秀喜氏の背番号55を背負うも今季から44に変更し、再出発の1年。若き大砲が勝負の9月に放った1発で、マジックを8に減らした。
腹の底からほえた。自分の力で運んだ白球が、故郷広島の左翼の夜空に吸い込まれた。逆転決勝2ラン。原監督が目を見開き、出迎えてくれた。力いっぱい拳を合わせる。期待され続けた未完の大器。優勝争いが佳境を迎える中で、大田が男になった。
無我夢中だった。接戦の8回無死一塁。ネクストで待機していると原監督から耳打ちされた。「思うように打ちなさい」。開き直った。広島中田の低めのボール気味のスライダーをすくい上げる。難易度の高い球を仕留めた。最後に放ったプロ2号は12年9月25日の広島戦。722日ぶりに同じマツダスタジアムで放物線を描いた。「2年前も、2年ぶりも広島。優勝を目指す中で価値ある一打を打ててうれしい」と、かみしめた。
昨季まで松井秀喜氏の背番号55を背負ったが、今季から心機一転、44を背負った。キャンプでは臨時コーチを務めた松井氏の指導も受けた。だが結果は出ない。オープン戦の不振に「監督に『野手を辞めて投手になれ』と言われちゃいました…」と肩を落とした。センターの座が空位の中、インフルエンザに感染し、開幕1軍も届かなかった。「開幕の阪神戦は能見さん、榎田さんと左腕がいた。チャンスがあったのに…」。悔やみの言葉が続いた。
だが2軍では牙を研ぎ続けた。連日のように岡崎2軍監督を打撃投手に、フリー打撃を繰り返した。球をギリギリまで見極め、引きつけて逆方向へ打つ。「逆方向の打球を常に追い求めている。右方向への本塁打しかうれしくない」。この日も引きつけたからこそ、低めのスライダーに体勢を崩されながらも腰が残った。理想とは逆方向でも喜びは格別だった。
13日の試合前イベントでは広島土砂災害の募金をファンに呼びかけた。抱負を口にすると「声が小さい!」「元気だせ!」「お前ならできる!」と厳しくも温かい声援が飛んだ。「もちろん(本塁打を)期待してください」と胸を張った。試合後のヒーローインタビュー。「おめでとう!」の祝福が降り注いだ。44番はファンへ堂々と両手を突き上げ、控室へと消えた。【広重竜太郎】
◆大田泰示(おおた・たいし)1990年(平2)6月9日生まれ、広島県福山市出身。東海大相模では2年夏の神奈川大会、3年夏の北神奈川大会で準優勝。甲子園出場を逃したが3年夏は大会新記録の5本塁打を放った。高校通算65本塁打。08年ドラフト1位で巨人入団。松井秀喜の背番号55を継承した。今季は背番号を44に変更。188センチ、95キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1200万円。
▼代打大田が8回に逆転2ラン。大田の本塁打は12年9月23日ヤクルト戦、同年9月25日広島戦に次いで3本目となり、代打本塁打は初めて。肩書付きの殊勲安打は11年5月18日楽天戦の勝ち越し打、12年9月1日DeNA戦の先制打に次いで3本目(V打も3本目)。逆転打はプロ入り初めてだ。今季、巨人の代打本塁打は両リーグ最多の9本目だが、代打Vアーチは今季チーム初めてとなった。



