阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が「最多1面賞」を獲得した。2014年、日刊スポーツ(大阪最終版)の1面を飾った回数で、新助っ人大砲が堂々のトップだった。キャンプ時期は来日遅れなどで心配させたが、シーズンを通じて4番に座り、打点王の大活躍。昨年トップだった藤浪をしのぎ、関西スポーツ界の顔になった。

 11年新井、12年金本、13年藤浪…。1面の登場回数はその年の関西の顔と言える。14年の覇者はゴメス。36回のフロントページは、試合のヒーローになった時だけではない。時には敗因となり、時には6連戦開始のキーマンとして取り上げられた。ゴメスの36回には1年のドラマがある。

 2月、日本のスポーツ界がソチ冬季五輪に沸いていたころ。2月5日付の1面に「ゴメス来ない」の見出しが躍った。チームの命運を握る主砲は、出産を終えたばかりの夫人への付き添いを望んでいた。もちろん、2月11日付の入団会見を報じるものも1面。そこからは、一向に状態が上がらない助っ人に「?」の紙面が続いた。右膝痛はいかがなものなのか。3月7日付では「ゴメス走った」で1面を勝ち取ってしまった。期待値が大きいからこそ、一挙手一投足が開幕まで大きく報じられた。

 そんな1面ジャックも、シーズンに入ると中身が一変する。3月29日付。前日の開幕戦は能見の乱調で巨人に12失点大敗を喫した。重たい黒星発進でもゴメスは2二塁打で2打点。「頼れる」の見出しを皮切りに、4月に入っても打ちまくった。開幕からの連続出塁は27試合を記録。一塁を踏むだけで原稿になる異例の展開だった。大阪市北区の日刊スポーツ大阪本社でも夕方の「紙面編集会議」は連日ゴメスの話題だった。

 ご存じの通り、打点王。143試合に出場し、ファンが仰天する活躍で1年目を駆け抜けた。日々の取材では、悔しい負け試合でもきっちりとファンにコメントを発信する。通訳が側におらず、片言の英会話になっても、質問の意味をくみ取ろうとする。そんな姿勢だから、阪神の顔になれたのは間違いない。

 来季は2年連続の1面王となれるのか。ヒゲを蓄えた笑顔の1面をたくさん見たいのは、虎党みんなの願いだ。【松本航】