今年の夏も、関取を始めとして巡業に参加している多くの関係者に「絵日記」(https://www.nikkansports.com/battle/sumo/diary/2016/article/)を描いてもらった。自らすすんでスケッチブックを手に取ってくれた人、昨年に引き続いて受け入れてくれた人、すごく頭を悩ませてくれた人、嫌だ嫌だと言いながらも頑張ってくれた人-。残念ながら断念するも、果敢に挑戦してくれた人もいた。

 多くの人は最初に「絵心がないから」と断ろうとする。でも、絵を描いてもらうのではなくて、あくまでも絵日記。その人の「心」が伝われば、うまい下手は関係ない。そう言いくるめると? 分かってくれた多くの人が趣旨に賛同してくれた。

 日馬富士や錦木、栃ノ心は「身近なもの」に感謝を込めて描いてくれた。誉富士や松鳳山、御嶽海はまさに“この夏巡業の出来事”を題材に選んだ。誉富士が描く弟弟子の宝富士は、説明を受けなくても分かるぐらい似ている。大翔丸や木村庄太郎、木村元基、輝は夏ならではの絵。さらに白鵬も楽しんでくれた。

 1枚の絵からは、関取らの「心」が伝わってくる。たとえば大栄翔の「ひまわり」。中学時代は園芸部だった彼は、いつも上を向いているひまわりが特に好きだという。花言葉は「あなただけを見つめる」だと教えると「自分も一途なので、合っている。『ひまわり系男子』ですね」と新しい言葉をつくっておどけた。

 石浦が描いた「嘘のない稽古」と後輩たちの姿は、自分自身への励みでもあった。高安の絵からは、両親への感謝の思いが伝わる。うまい下手は、やはり関係ない。たった1枚の絵から、関取たちの人柄と、大げさに言えば「人生」が見えてくる。

 そんな姿が、見ている人たちに少しでも届いて、彼らの意外な一面を楽しめたなら、うれしい。【今村健人】