鉄壁ガードは腹から崩す!

 30日にWBO世界スーパーフライ級王者オマール・ナルバエス(39=アルゼンチン)に挑戦する、前WBC世界ライトフライ級王者井上尚弥(21=大橋)が19日、横浜市内のジムで練習を公開した。世界王座を通算27度防衛している名王者攻略のため、ボディーへの3種類のパンチに磨きをかけてきた。国内最速のプロ8戦目での2階級制覇に向け、万全のコンディションで最後の調整に入る。

 4月の国内最速のプロ6戦目での世界王座奪取から、わずか9カ月。井上は、2階級制覇がかかる39歳の名王者との試合当日を「世代交代ではないが、伝説の王者を倒して、自分が伝説をつくる日」と言い切った。躍動するかのように力強いパンチを打ち込み、好調ぶりを披露すると「スピードと若さで勝ちたい」。引き締まった表情を浮かべ、言葉に力を込めた。

 実績だけで見れば無謀とも言える大きなチャレンジだ。王者は、02年のWBOフライ級王座獲得から、約12年間世界王座に君臨。高い位置で固めた鉄壁のガードとディフェンス技術を武器に、不用意に飛び込んできた相手にカウンターを合わせるスタイルで、井上の6倍を超える46戦を戦ってきた難攻不落の名手だ。

 父の真吾トレーナーは「あのガードを上(顔)で崩すのは無理」と断言した上で、攻略の糸口を「腹」に絞った。用意してきたのは<1>右ストレート<2>右アッパー<3>右を見せてからの返しの左の3種類のボディー打ちだ。「上を見せて下。それを繰り返すことで、相手の足を止めたい。慌てて手を出してきたら、スピードでは尚弥は絶対に負けない」と解説した。

 初のスーパーフライ級戦を、井上は「楽しみ」と言った。ライトフライ級のリミットとの差は約3・2キロ。減量苦で「しゃべりたくても、乾いて口が回らなかった」と振り返った前回の試合前とは異なり、表情も明るい。キャリア最多の170回におよぶスパーリングと合わせ、フィジカルトレーニングの量も増やし、上の階級で戦う体を作り上げてきた自信もある。

 年末には世界戦だけで8試合が予定されるが「倒そうと思って倒せる相手ではない。つまらない試合になっても、勝ちに徹する」と自身の試合に集中する。世界を驚かせる準備と覚悟はできている。【奥山将志】