大関照ノ富士(23=伊勢ケ浜)が強行出場の末、優勝争いの首位を明け渡した。

 大関豪栄道(29=境川)に寄り切られて3連敗。互いに左で張る立ち合いも、もろ差しを許し、強引に振って右の巻き替えを図る。だが一気に寄られて力なく土俵を割ると「昨日の今日なので、ちょっと怖さもあった」と胸中を明かした。

 13日目の大関稀勢の里戦で寄り倒された際に右膝を痛め、精密検査の結果「右膝前十字靱帯(じんたい)損傷」で全治1カ月と診断された。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)からは休場も提案されたが「やるだけやる。後悔したくない」と直訴し、出場を決断。「今場所は横綱も(2人)休場してたし、自分も休場したら…責任感とか、優勝争いとか、面白くなくなるじゃないけど、ちょっとね」。大関の自覚も後押しして、テーピングと痛み止めの力を借りて土俵に上がった。

 土俵下では右足を伸ばして座った。「自分の体は自分しか分からない。やるだけやって終わりたい」と繰り返したが、本来の豪快で力強い相撲は影を潜めた。それでも、本人は前向きに捉えている。

 「昨日も『痛っ』となったときに自分で座った。そのままいったらもっとひどかった可能性もある。集中してたから、そういうことができたのかな。いい経験になるよ。無理してやるより、冷静に自分の相撲を考えて。今場所は優勝、勝つ意識が先場所より強かった。それで、こういうけがもしたと思う」。

 横綱鶴竜が2敗を守り、賜杯の行方は千秋楽の直接対決に委ねられた。照ノ富士が逆転優勝するためには本割、決定戦で連勝するしかない。「やるべきことをやって、優勝できたらうれしい」。最後まで、大関の務めを全うする。