大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が、初優勝のチャンスを逃した。結びの一番で、過去28勝13敗と相性の良かった横綱鶴竜(30=井筒)に敗れ(10勝)4敗目。単独トップの鶴竜と星2つの差がつき、2横綱休場、全勝だった大関の3連敗という絶好のV好機も、夢はついえた。

 最初の立ち合いで鶴竜が右へ変化。これは不成立で仕切り直しとなり、2度目の立ち合い。ここでも鶴竜は、今度は左へ変化した。よもやの左右への変化に、稀勢の里は体勢を崩されながらも対応。西土俵に一度は詰まったが重い腰で残し、左を差して下手を引きつけた。ここから一気に、反対の東土俵まで走ったが、腰が浮き体を入れ替えられ、寄り倒された。

 支度部屋に入るなり「あ~っ!」とうめき声をあげた。座っても悔しさがこみ上げ、剥がした手首のテープを放り投げ、舌打ちや、何やら口ごもるように腹の底から何かを発したが、肉声になるものはなし。最後まで無言のまま、V逸の悔しさをあらわにしていた。