映画「キャタピラー」(若松孝二監督)に主演した女優寺島しのぶ(37)が21日、第60回ベルリン映画祭で最優秀女優賞を受賞した。日本人女優では左幸子さん(64年)、田中絹代さん(75年)に次いで3人目の快挙となり、大阪市内で会見を行った。寺島はベルリン滞在わずか2日で舞台出演のため帰国したばかり。「うれしい。興奮して一睡もしてないんです」と言い、この日夜の舞台に立った。

 ジーンズ姿で報道陣の前に立った寺島は、全身から喜びが満ちあふれていた。受賞を知ったのが早朝4時。

 寺島

 ホテルの部屋で、現地(ベルリン)からの情報を得ようと、インターネットを見ていたんです。受賞がわかって、恥ずかしいぐらいキャーキャー声をあげながら、その場にいたマネジャーと抱き合って喜びましたが、それ以外のことは覚えてないんです。

 受賞を知って一睡もしていないばかりか、帰国したのが前日(20日)のこと。わずか2日間のベルリン滞在後、若松監督らと別れ、そのまま舞台「血は立ったまま眠っている」(蜷川幸雄演出、大阪・シアターBRAVA!で、21~28日)の現場に舞い戻った。

 戦争の不条理に迫った「キャタピラー」への出演は、脚本を一読した際に「久しぶりに体に電気が走った。これはやらないといけない」と即決したという。思い入れを込めた作品での受賞だけに、会見では、じわじわと喜びを実感していると打ち明けた。「各国の友達から祝福メールが来て“世界”を感じました。蜷川さんから『ベルリンに行ってこい』と言われて行きましたけど、オープニングにも発表にも立ち会えず、ご飯食べて帰ってきただけですが」。

 ベルリン国際映画祭は、カンヌ、ベネチアと並ぶ世界3大映画祭の1つとされ、かつて黒沢明監督が「隠し砦の三悪人」で監督賞を受賞(58年)したり、アニメ「千と千尋の神隠し」が最高賞の金熊賞に輝く(02年)など、日本映画とも縁が深い。日本人女優では75年の田中絹代さん以来35年ぶり3人目の快挙。日本映画史に名を刻んだ大女優たちと肩を並べたが、寺島は「いえ、そうは思っていません。ただ、次に日本人で誰かが受賞したら『寺島しのぶ以来』となりますから、その時に消えていないように頑張りたいですね」と謙虚に話した。今後の女優活動には、さらなる自覚と責任を背負っていく構えだ。