ハリウッドで最も権威のある映画の祭典アカデミー賞が、人種問題で揺れています。14日に発表された今年のノミネーションで、俳優部門と監督賞が2年連続で白人ばかりだったことを受け、ボイコット騒動に発展するなどハリウッドに激震が走っています。スパイク・リー監督や俳優ウィル・スミスとジェイダ・ピンケット=スミス夫妻が、この結果に抗議するために2月28日にハリウッドで行われる授賞式を欠席することを表明。映画「ホテル・ルワンダ」(04年)で主演男優賞にノミネートされたドン・チードルらも同賞の選考結果について苦言を呈しています。

 黒人のみならず、ジョージ・クルーニーや映画「スポットライト 世紀のスクープ」で助演男優賞にノミネートされたマーク・ラファロら白人俳優も今年の選考内容を批判。クルーニーは「10年前を振り返ると、アカデミー賞は今よりもっと良い状態だった。どれだけ多くのアフリカ系アメリカ人がノミネートされていたか考えて欲しい」とコメント。「ロッキー」のスピンオフ作「クリード チャンプを継ぐ男」とヒップホップグループN・W・Aを描いた「ストレイト・アウタ・コンプトン」は作品賞候補に値すると語ったほか、「コンカッション」のウィル・スミスと「ビースト・オブ・ノー・ネーション」の俳優イドリス・エルバもノミネーションされてしかるべきだったと、作品や俳優名をあげてアカデミー賞のあり方に提言をしています。

 そんな中で、今度はこの騒動自体が白人への差別行為と主演女優賞にノミネートされたイギリス人のシャーロット・ランプリングが発言して物議を醸しています。フランスのラジオ局の取材で、「黒人がボイコットすることは、逆に白人に対する差別。黒人の俳優はノミネートされるほど良い演技はしていなかったのでは」と語り、「主演女優賞を受賞しても誰も拍手はしないと思う」などと批判のコメントが殺到。授賞式前の大切な時期に不用意に発言したことに対し、「コメントが誤解されてしまって残念」と、釈明する騒ぎになっています。

 アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは今回の騒動を受け、2020年までに賞の投票権を持つ会員の黒人や女性などマイノリティー(少数派)の数を倍に増やす計画を発表しました。アカデミー賞会員の大半が白人の年配男性であるといわれていますが、会員の情報は非公開。そのため実際にどの程度のマイノリティーが新会員になるのかは明かされていません。2012年にはロサンゼルス・タイムズ紙がアカデミー賞会員に関する特集を組んだ際には、5765人中94%が白人で、黒人会員はわずか2%であると報じました。また性別では77%が男性で、男女格差があるため、監督賞などでは女性監督がノミネートされ難いともいわれています。

 「それでも夜は明ける」(13年)で、アカデミー賞史上初めて黒人監督の作品が作品賞を受賞して歴史を塗り替える快挙といわれただけに、2年連続の白人ばかりのノミネーションは時代に逆行する流れと感じた人も多かったと思います。

 実際にクルーニーは10年前は今よりも黒人俳優がノミネートされていたと語り、過去に「ALI アリ」(01年)と「幸せのちから」(06年)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされているスミスも、「2度とも賞をとったのは黒人で、1回目はデンゼル・ワシントンで、2度目はフォレスト・ウィテカーだった。白人に負けたことはない」と語っていますが、ここ10年間の主演男優賞の白人と黒人の割合をみるとがく然とします。ノミネートされた50人中(複数回ノミネートされた人も含む)、黒人はわずか4人。一見すると狭き門のように見えますが、クリント・イーストウッドは「何千人という人がアカデミー賞の候補になりながらも、その大半がオスカーをとることができない。多くの人が泣いているはずだ」と語り、人種に関係なくオスカーは元々狭き門なのだとの見解を示しています。

 アメリカの人種問題は根深く、今回の騒動にもそうした歴史的背景があってのこと。白人ばかりの授賞式で司会をするのは、黒人のクリス・ロック。どんな授賞式になるのか、注目です。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)