東京・渋谷にあるパルコ劇場が43年の歴史にいったん幕を閉じた。パルコビルの建て替えのためで、3年後に完成する新パルコビルで再開場するが、通い慣れた劇場が一時的にも姿を消すのはちょっと寂しい。
1973年に西武劇場として誕生した。もともとは当時流行していたボーリング場が入る予定だったが、欧米でボーリングが下火になっていることを知り、劇場に変更になった経緯がある。木の実ナナと細川俊之の「ショーガール」の成功でおしゃれな劇場というイメージが定着した。85年にパルコ劇場と名称を変え、刺激的な舞台を上演してきた。唐十郎と蜷川幸雄コンビの「下谷万年町物語」「黒いチューリップ」はこれまでの劇場イメージとは真逆のわい雑さで、ワクワクして見た思い出がある。
その間にさまざまな事件もあった。79年、「ドラキュラ」の初日前にヒロイン役の関根恵子(現高橋恵子)が若手作家とともにタイに逃避行し、市毛良枝が1日の稽古で代役を果たした。83年、井上ひさし原作「パズル」を上演の予定だったが、原稿が初日に間に合わず、公演中止になった。85年2月の夏目雅子主演「愚かな女」では彼女の美しい演技に魅了されたが、公演半ばに緊急入院。舞台にかけていた夏目の「代役を立てないで」との願いを受け、公演は中止された。白血病で、同年9月に27歳の若さで亡くなった。
11年3月、東日本大震災の翌日もパルコ劇場では三谷幸喜作・演出「国民の映画」が上演され、私も見た。多くの劇場が公演を取りやめる中、劇場側と三谷は「こういう時こそ、劇場の灯りをともさなければならない」と続行の道を選んだ。観客は2割ほどしか入らなかったが、舞台と客席に異様な緊張感が漂い、2度とない貴重な観劇体験だった。【林尚之】




