数多くのミステリー文学賞を得ているリー・チャイルドの原作シリーズは、元米軍憲兵隊捜査官の流れ者が主人公だ。前作「アウトロー」(12年)に続くトム・クルーズ主演の今作は、軍隊内の不正が題材になっていて、「正義の裁き」も一般社会から隔絶された軍隊内で行使されるところがミソになっている。

 上意下達の階級社会だから、上に悪が巣くえば真相解明の難易度は上がり、そこが見どころになる。閉鎖社会の暗闘だから、アクションは地に足の着いた殴り合いが基本になる。

 クルーズが汗をかき、息を上げ、傷つけば、それがダイレクトに伝わってくる。拳の痛みが実感できる。「ミッション・インポッシブル」シリーズより、体を張ったかいがあったろう。

 「アベンジャーズ」の女エージェント役、コビー・スマルダーズが後輩将校役で相棒となる。こちらも撮影半年前の骨折がウソのようなアクションを見せる。

 主人公の設定がユニークで、時系列にはほとんど縛られないシリーズなので、20作を超える原作からつまみ食いのように映画化できるうまみもある。時を置かずにクルーズ主演の3作目がお目見えするはずだ。【相原斎】

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