市川猿之助(39)が蜷川幸雄氏(79)演出の舞台「元禄港歌~千年の恋の森~」(来年1月、東京・渋谷シアターコクーン)に主演することが1日、分かった。80年に帝国劇場で初演され、美空ひばりさんが劇中歌を歌った伝説の舞台。猿之助は、ごぜ(盲目の女芸人)の座元役で、年上の宮沢りえ(42)段田安則(58)の母親役に挑む。

 猿之助が蜷川氏と4度目のタッグ作品に選んだのが「元禄港歌」だった。舞台「近松心中物語」で成功した秋元松代氏の脚本、蜷川氏の演出という組み合わせの第2弾として80年に初演され、平幹二朗、太地喜和子さんが出演した。港町の大店を舞台に、結ばれない男女、悲しい秘密を背負う親子を描き、ひばりさんが猪俣公章さんが作曲した劇中歌を歌い、辻村ジュサブロー氏の人形が舞台を彩った。

 脚本を読んだ猿之助が蜷川氏に上演を直訴して実現したが、熱望した役は、初演で平が演じた大店の長男信助や、太地さんのごぜの初音でなく、故嵐徳三郎さんが演じたごぜの糸栄だった。98年の上演で、猿之助の伯父、先代猿之助(現猿翁)夫人の故藤間紫さんが演じた。猿之助は「憧れの作品の上演、蜷川さんが元気なこと、何よりうれしく思っています。徳三郎さん、紫先生、美空ひばりさんへの思いを胸に務めさせていただきます」と話す。

 蜷川氏は「初演で苦労したこの作品を再演できるのはとてもうれしい。この仕事で猿之助さんとご一緒できるとは思っていませんでした」と話す。初音を宮沢、信助を段田が演じるが、宮沢は三味線をひき、段田は能を演じるため、稽古に入っている。宮沢は「蜷川さんの愛あるゲキをガソリンに走りきりたい」。段田は「無条件に演劇を見る喜びにあふれた作品」。共演は高橋一生、鈴木杏、市川猿弥、新橋耐子ら。