大ヒットドラマ「家政婦のミタ」などで知られる脚本家遊川和彦氏(60)が映画監督に初挑戦することが29日、分かった。作家重松清氏(52)の小説「ファミレス」の映画化「恋妻家(こいさいか)宮本」でメガホンをとる。子どもが独り立ちした後、50代からの夫婦生活にどのように向き合うかをユーモラスに描く作品で、主演の阿部寛(51)天海祐希(48)が夫婦を演じる。遊川氏は「演出家になりたかった。日本映画を超えた個性を出してオスカーを狙う」と意気込む。

 映画監督初挑戦までの道のりは、昨年1月に脚本を依頼されてから始まった。オリジナルにこだわり、小説やコミックの映像化のための脚本は書かない主義だったが、定年後の夫婦がどのように生きるかを描く物語に強い興味を持ち、「遊川流にやらせてもらえるなら」という条件で引き受けた。当初は監督候補が数人いたが、今年4月に福山亮一プロデューサーから「撮ることができるのは作品を全て知る遊川さんしかいない」といわれ、監督挑戦を決意した。

 遊川作品に初主演する阿部は「並々ならぬ情熱を感じ、重松さんの世界を遊川流にどう演出なさるのか楽しみ」。ドラマ「女王の教室」や放送中の「偽装の夫婦」で遊川作品に主演している天海も「ぜひ参加させていただきたいと思いました。脚本を読んで泣くわ、笑うわ、大変でした」と話している。撮影は来年1月スタート。東宝配給で17年公開予定。

 ◆遊川和彦(ゆかわ・かずひこ)1955年(昭30)10月24日、東京都生まれ。87年TBS系「うちの子にかぎって…スペシャル2」で脚本家デビュー。03年TBS系「さとうきび畑の唄」が文化庁芸術祭大賞。「GTO」「魔女の条件」「オヤジぃ。」などを手掛けた。05年日本テレビ系「女王の教室」の最終回視聴率は25・3%、11年同局系「家政婦のミタ」の最終回視聴率は40・0%(視聴率はいずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。

 ◆「恋妻家宮本」 宮本陽平と美代子は合コンで知り合い、できちゃった結婚した夫婦。結婚25年を経て息子夫婦が福島に転勤した日、2人きりの生活に戸惑い美代子が飲みつぶれた。夜、陽平は妻の記入欄が全て書き込まれて押印された離婚届を発見し動揺する。悶々(もんもん)とする生活の中、美代子が家を出る。