「鴨川ホルモー」や「プリンセス・トヨトミ」などの著作で知られる作家の万城目学氏が、ある映画の制作陣から受けた仕打ちを暴露。「いちばん仕事をしてはいけない相手と関わってしまったうかつさ」と嘆いている。

 万城目氏は30日、「今年を漢字一字で表すなら『苦』。くるしいより、にがいのほうで。来年はよき相手と、よき仕事ができますように」とツイッターに投稿した。実は万城目氏は2年前から、オリジナル脚本を担当するという話で、ある映画の制作に関わっていた。そのためにシナリオ学校にまで通い、今年になって脚本を書き上げたのだが、残念ながら全部ボツをくらってしまったそうだ。

 納得しきれない部分もあった万城目氏だが、それでも自分の力量の低さも原因だと考えていた。作家になって初めての全ボツに強いショックを受けたものの、「いつか小説というかたちで書き直したらいい」と気持ちを整理した。

 しかし、その傍らで制作が進行していた映画の予告編を見て我が目を疑った。なんと万城目氏がもともと提案した脚本の要素が残っていたのだ。しかも万城目氏は、主人公の名前など、自身の脚本にあった要素は新脚本からすべて削除するようにプロデューサーに依頼していたのだ。

 もちろん予告編を見た万城目氏は抗議。それなりの騒ぎになり、謝罪の申し入れはあったが、撮り直しせず公開は行うという対応に疑問を感じて、すべて断ったそうだ。

 万城目氏は「私が脚本に書いた非常に重要なフレーズが、映画で小ネタとして使われ、これが公開されてしまうと、私が小説を書いても、『ああ、あの映画のあれね』とオリジナリティ・ゼロのものと扱われてしまう、つまり小説を書けなくなる」と吐露する。「いちばん仕事をしてはいけない相手と関わってしまったうかつさ。大失敗だった。今も毎日後悔を繰り返しています」と嘆く。

 ただ、一連のツイートは「この怨念・諦念・無念はこれきり今年といっしょに流し去ります」という意図のものであるとして、「映画そのものには恨みはまったくございませんので、作品や相手の特定についてはごかんべんを」とファンに理解を求めた。