肺がんのため7日に亡くなったニュースキャスター筑紫哲也さん(享年73)の通夜が8日、密葬で、東京都練馬区の自宅でしめやかに営まれた。女優渡辺えり(53)歌手井上陽水(60)辻元清美衆院議員(48)フリーキャスターの田丸美寿々さん(56)ら生前の筑紫さんとゆかりの深かった友人や仕事仲間らが弔問に訪れた。また、筑紫さんとつねにライバル視された久米宏氏(64)がこの日、ラジオで筑紫さんへの惜別の思いを語った。

 久米氏は8日、パーソナリティーを務めるTBSラジオ「久米宏

 ラジオなんですけど」(土曜午後1時)で、7日に亡くなった筑紫さんについて「後ろにいてくれる安心感があった」と、思いを語った。

 久米氏は番組の冒頭、「昨日(7日)、悲報と同時にコメントを求められたが、言うべき言葉がない、何を言っていいの分からなかった」と、さまざまな思いが脳裏をめぐったと言いたげに切り出した。

 「サッカーで言えば、筑紫さんは左のサイドバック。僕の後ろにちゃんといてくれて、たまに前に行って僕のパスをゴールしてくれる。つまり、僕が少々、乱暴なことを言っても、あとで、ちゃんとフォローしてくれる安心感がありました。安心してサッカーができる貴重な感覚」と語った。久米氏はテレビ朝日系「ニュースステーション」のキャスターとして、約1時間後に放送開始のTBS系「ニュース23」の筑紫さんとはライバル視もされたりしたが、信頼し合い、しっかりとテレビジャーナリズムの一時代をつくった。

 「ニュースステーション」終了後は、何度か筑紫氏と一緒に仕事をし、05年にはTBSで放送された総選挙の報道特番でも共演した。「もう1回できるといいなと思っていた。選挙が遠くへ行って、できなくなったな」としみじみ。

 筑紫さんが朝日新聞記者時代にキャスターを務めたテレビ朝日系「こちらデスク」も「1回も見逃していません。必ず見ました。ああ、ニュースってこうして伝えるのか。こういう見方もあるのかと、ひそかに勉強していたんです」とも告白した。

 2人はライバル番組のキャスターを、偶然だがともに18年半務めた。久米氏は「2人ともずいぶん長くやったな」と語ると「筑紫さんは本当のニュースキャスターでした」と、天国へ向けて言葉を送った。