<第60回NHK紅白歌合戦を語る(1)=北島三郎>

 年の瀬に数多くのドラマを生んできたNHK紅白歌合戦が今年の大みそかで還暦を迎えます。60回の歴史の中では、誰もがそれぞれの紅白の思い出があるはず。そこで、大きな足跡を残してきた歌手らにエピソードや思い出などを語ってもらう連載「第60回

 NHK紅白歌合戦を語る」がスタートします。第1回は最多46回目の出場となる大御所北島三郎(73)です。

 「60回のうち46回も出ているから年寄りだとは思わないでね。まだまだ、1年生と同じつもりで皆さんが元気になるような曲を歌うつもりでいます。その気持ちでここまでやってきました」。

 芸道48年を誇る歌謡界の“大御所”こと、北島三郎の初出場は63年(第14回)。視聴率は81・4%を記録し、ほとんどの国民がブラウン管にかじりついていた時代だ。翌年にカラー放送がスタート。「その年、出演前に舞台袖で緊張していたら『サブ、サブ』って聞こえてくる。こんな時に誰かと思ったら、美空ひばりさんが『頑張ってね』と言ってくれたんだ。うれしかったね」。三波春夫さん、淡谷のり子さん、ディック・ミネさん…。親交のあった多くの人たちがすでに鬼籍に入った。「おれが最後に残っているような感じ。年寄りが頑張ってるようだけど、それでいいじゃないかと思う。おれの歌で元気になって、来年も頑張ろうと思ってくれる人がいる。その人たちのために一生懸命に歌おうと思うんです」。ポップスやヒップホップなどの新しい音楽に押されっぱなしの演歌だが、あくまでこだわり続ける“最後のとりで”になろうとしている。

 一緒に出演する「3分の1以上はジャンルの違う歌手」(北島)だが、それも時代の流れ。3年前に共演したDJ

 OZMAが引き起こした「全裸スーツ騒動」も時代の流れと思っている。「NHKが、その年に目立ったものを引っ張り上げてやっているから、それを認めることには何の違和感もないですよ。ただ、おっぱいの演出は本番まで本当に知らなかったんだよね。後で知って本当に驚きました」。

 時の流れにさおはさせない。ただ、それを承知の上で、NHKにリクエストもある。「例えば1曲を何人で歌ってもいいじゃないか。私の『風雪ながれ旅』を5人で歌えば、多くの歌手がステージに立てる。どうでしょう。それに全部生放送でなくてVTRを使ってもいいじゃないか。いい歌をじっくり聴かせることができるし、違和感はないと思うんだよね。わがままかなぁ~」。

 最後に次女と結婚した北山たけしとの親子初共演について聞いてみた。公私のけじめはきちんと付けるべきとしながら「まぁ、北山も身内になったことだし。親子ね…、ちょっと喜びも感じます」。今年の紅白は本名の大野穣にとっても忘れられないものになりそうだ。【松本久】

 ◆北島三郎(きたじま・さぶろう)本名・大野穣(みのる)。1936年(昭11)10月4日、北海道知内町生まれ。62年に「ブンガチャ節」でデビュー。同年に「なみだ船」で日本レコード大賞新人賞。86年に「北の漁場」で同賞最優秀歌唱賞を受賞。84年にブラジルからアンシェッタ勲章を受け、97年には日本・モンゴル友好親善大使。91年に紺綬褒章。趣味はゴルフ、競馬。161センチ、56キロ。血液型O。

 [2009年12月18日6時50分

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