10年10月から11年3月までの無名塾公演「炎の人」(三好十郎作、鵜山仁演出)後の仕事を白紙にしていた俳優仲代達矢(77)が、来秋に舞台「ホブスンの婿選び」に主演することが24日、分かった。一時は引退を示唆していた仲代だが「台本が面白くてやりたくなった」と役者の虫が引退の2文字を吹き飛ばした。

 「ホブスン-」は劇作家ハロルド・ブリグハウスの作品で、54年にデビッド・リーン監督で映画化された。男やもめの靴屋主人と3人の娘の結婚をめぐる騒動を描く喜劇。九州の演劇鑑賞団体関係者に勧められたという仲代は「台本を読んだら面白かった。風俗喜劇で会話がうまくできている」。

 60年の役者人生のラストランとして「『炎の人』の後は仕事も入れず白紙です。そろそろ引き際」などと話していたが、昨年の「マクベス」は2カ月間のロングラン、今年はイプセン作「ジョン・ガブリエルと呼ばれた男」の舞台など元気な77歳の役者魂を刺激した。「娘役の3人の女優がしんとなり、僕は座長芝居というかちょっと引いて、若い人を前面に出すにはいい題材と思った」。演出に高瀬久男氏が決まるなど準備も進んでいる。

 そんな仲代が今、取り組んでいるのがゴッホ役で主演する「炎の人」。8月からのけいこを前に「30代のゴッホをやるには年齢的ギャップがある。ギャップをどう埋めるか悪戦苦闘中」と生みの苦しみの中にいる。ゴッホは好きな画家だった。「狂気の人と言われるけれど、狂気がもしかしたら正しいのかもしれない。けいこ前はいつも苦しむけれど、この年になっても不可能に近いことに挑戦する気概はある」。

 「炎の人」は主宰する無名塾の中堅・若手が出演し、ゴッホが愛したモデルのシィヌ役に入塾2年目の松浦唯を抜てきした。「作者の三好十郎さんは演劇の理想をゴッホに託したところもある。その思いを若い人につなげていきたい」。10月2日に石川県七尾市の能登演劇堂で幕を開け、来年3月の池袋サンシャイン劇場まで全国を巡演する。仲代のもとには映画の出演依頼もあり、役者人生のグランドフィナーレはもっと先になりそうだ。

 [2010年7月25日8時23分

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