無期限謹慎の歌舞伎俳優市川海老蔵(33)の代役を坂東玉三郎(60)が務めることになり9日、京都市内で会見を行った。海老蔵の来年1月の座頭公演「初春花形歌舞伎」(東京・銀座のル・テアトル銀座)が中止となり、代わって「坂東玉三郎特別公演」を行う。

 立女形として人気、実力ともに歌舞伎界一の玉三郎が海老蔵の窮地を救った。会見に同席した迫本淳一社長(57)は「玉三郎さんのおとこ気にうれしく感動しました」と声を震わせた。

 同社長によると、玉三郎に出演依頼をしたのは海老蔵が会見を行った7日。玉三郎から快諾を得た。関係者によると玉三郎は一連の騒動に制作側の苦労を気遣うほどだったという。玉三郎は「お引き受けする時は“大丈夫かな?”とも思ったのですが、役者はお声を掛けていただくうちが華」と穏やかに話した。

 玉三郎は今月の京都・南座公演後、1月は休みを取り2月には博多座公演が決まっている。体調維持のため2カ月、3カ月と連続公演を行わない主義だったが、弟のようにかわいがってきた海老蔵のために「禁」を破った。海老蔵の座頭公演中止が決まり、劇場に穴をあけた場合、松竹の損害は2億円を超えるとも言われていた。その責任は海老蔵にも重くのしかかるところだった。

 海老蔵と共演するはずだった「顔見世興行」の休演が決まり、玉三郎は「反省しています」という内容の毛筆の手紙を1日に受け取った。今回も玉三郎が自身の「禁」を破って引き受けてくれたことを伝え聞き、海老蔵は泣いて感謝したという。

 急場の公演にもかかわらず、玉三郎は女役の大役「阿古屋」と舞踊の「女伊達」のぜいたくな2本立てを決めた。特に「阿古屋」は琴、三味線、胡弓を弾かなければならず現在の歌舞伎界では玉三郎しかできないと言われる演目。「正直、京都に来た時はこんなことになるとは思っていなかったので、楽器も何も持って来なかった。慌てて取り寄せて、明日からけいこを始めます」と話した。

 [2010年12月10日11時26分

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