歌舞伎俳優市川海老蔵(33)が示談に応じず、裁判を見据えて準備に入っていることが18日、分かった。海老蔵に殴打されたと主張する元暴走族リーダー、T・I氏が「円満な方向で解決に向かうことを望んでいます」と示談の意向を示し、前日17日には代理人の藤本勝也弁護士も年内決着を示唆した。しかし、海老蔵側はカリスマ民暴弁護士深沢直之氏の指導のもと示談に応じる気配はなく、裁判も辞さない構えだ。

 海老蔵側の姿勢は、変わっていなかった。複数の関係者が「最初から裁判で決着をつける意向です。示談に応じる気はないです」と証言した。

 ここ1週間、元暴走族リーダー、T・I氏側の動きが激しく、代理人の藤本弁護士は、海老蔵に殴られたとしてT・I氏の被害届提出をほのめかし、16日に会見を行うと発表した。しかし、直前に会見をキャンセル。17日には「法的に決着をつけるということではなく、円満な方向で解決に向かうことを望んでいます」と示談を示唆するファクスをマスコミに送り、藤本弁護士は「年内に解決しないといけないでしょう」「円満な方向で解決することを望んでいます」と早期決着の希望を明かした。

 硬軟両様の対応で海老蔵側を示談の場に引きだそうとしているようにも見えるが、海老蔵側は現段階で応じる気配はない。7日の会見にも同席した深沢弁護士は反社会的勢力と長く対決し、カリスマ民暴弁護士の異名を持つ。事件から数日後に深沢弁護士に依頼したが、その時点で示談の選択肢はなくなり、裁判での決着を見据えて準備を進めている。海老蔵はあくまで被害者という立場を堅持しており、示談など灰色決着は海老蔵の将来に禍根を残す恐れがあるためだ。

 また、暴行事件をきっかけに海老蔵バッシング的報道が氾濫したが、示談となれば、そういう報道を認める印象を与えてしまう。裁判で海老蔵に不利な話が出たとしても、長い歌舞伎人生を見越した場合、ここで一気にうみを出す荒療治も必要と見ているという。その推進者は父市川団十郎(64)と松竹の迫本淳一社長とされる。団十郎は後継者である海老蔵再生の最後の機会と見ており、米国でも活躍した国際派弁護士の経歴を持つ迫本社長は安易な妥協を嫌っているという。事件の決着は年を越しそうだ。

 [2010年12月19日9時14分

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