俳優竹野内豊(40)がサイパンでこのほど、主演映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」(平山秀幸監督、11日公開)の「太平洋戦争を伝えるキャンペーン」を行った。12月22日の沖縄からスタートした同キャンペーンは総移動距離1万5000キロに達した。第2次大戦の最激戦地サイパンで512日間戦い抜いた、故大場栄大尉を演じた竹野内は、中部太平洋戦没者の碑に、全国で折られた約1万1000羽の折り鶴をささげ、「平和を強く願い続けたい」と熱く訴えた。

 竹野内は山田孝之(26)、平山秀幸監督と並び、74年に日本政府が建立した中部太平洋戦没者の碑の前に、全国9カ所で折られた9色の折り鶴をささげた。碑の背後にそびえ立つ日本兵が身を投げた崖「スーサイドクリフ」の岩盤には、艦砲射撃の痕が残り「戦争の傷痕が事実、今でも存在している」とつぶやき、碑に寄り添うように点在する、遺族が建てた小さな慰霊碑群に静かに手を合わせた。

 竹野内

 久々に戻ってきました。出来上がったものを持って参りました。

 タイで撮影に入る1カ月前の昨年4月2日、竹野内は「生半可なものはつくれない」と役作りのためサイパンへ渡り、慰霊碑群では20分も祈り続けた。10カ月ぶりに再訪して祈った後、そのことをスタッフから聞き「20分もいたの?

 ウソ?

 2、3分くらいに感じた」と当時を振り返った。

 また密林に残る旧日本軍の野戦病院も再訪した。日本兵が飢えをしのぐために食べたカタツムリの殻や飯ごうなどが残ったままで、戦争から約70年が経過したとは思えないほど生々しい跡地に衝撃を新たにした。

 慰霊碑を訪れた日の夜、サイパン唯一の映画館「ハリウッドシアター」でプレミア試写会が行われ、上映後に「ブラボー」の声とともにスタンディングオベーションが起こった。

 竹野内

 全国から集めた鶴、折った方の思いをサイパンに届けるのが最終目的。(戦没者も)喜んでくださったんじゃないか。映画に関わらなかったら、恐らく一生来ることがなかった場所もあったし、全力で戦った方の苦しさも疑似体験できた。この映画が出来なかったら、サイパンの歴史を日本人は一生知ることがなかったと思う。本当に…いつまでも伝えていく気持ちを忘れてはいけない。

 日本全国を回り、サイパンまでの1万5000キロの旅を終え、公開まであと1週間…。竹野内の平和を伝える旅は最終章に入った。【村上幸将】

 [2011年2月3日9時0分

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