大みそかの第62回NHK紅白歌合戦で唯一、東日本大震災の被災地から歌う長渕剛(55)の中継地が、宮城県石巻市に決定したことが27日、明らかになった。長渕は、震災直後の4月16日に同市内を訪れ被災者や自衛隊を激励。6月には同市内の日和山公園で、地元小学生らとライブを行うなど支援活動を行ってきた。安全上の理由などで、本番は完全非公開で行われるが、石巻市だけでなく、被災地域すべてを鎮魂する歌唱になる。

 12月上旬に被災地からの歌唱を前提に、長渕の8年ぶり3回目の紅白出場が決まると、NHK側と長渕サイドで中継地の選定の作業が行われてきた。その結果、長渕と関わり深い石巻市が候補となり、このほど正式決定した。

 長渕は震災直後の4月16日に、いち早く石巻市を訪れ、避難所となっていた石巻高を慰問。救援拠点だった石巻総合運動公園では、不眠不休で活動する自衛隊員を激励した。6月26日には、同市内の日和山公園で、石巻小の児童100人や地域住民ら総勢1000人と、鎮魂と希望の歌として「TRY

 AGAIN

 for

 JAPAN」を大合唱。この模様はNHKの音楽番組「SONGS」で放送された。これらの活動が、同市を中継地にすることに大きく影響した。

 12月中旬に、石巻市が中継地に内定すると、長渕本人が同市を訪れ、亀山紘市長と会談も行った。長渕は「ご縁があって何度か足を運ばせていただいて、そして快く迎え入れてくださって、僕の中ではふるさとに匹敵するような感情が芽生えている」と話した。亀山市長は「(日和山公園では)子供たちと一緒に歌っていただき、未来を担う子供たちに大変勇気を与えていただいた。本当に、歌の力はすごいと思った。正式に決まれば、もちろん全面協力する」と話した。

 NHK側が「安全の理由などにより、この中継放送は完全非公開となるため、撮影地への立ち入りは一切できない」としているように、がれきや倒壊寸前の家屋などが今も生々しく残る地から、照明だけのシンプルな演出で新曲「ひとつ」を披露する。長渕は「無念さや悔しさやさまざまな思いを背中に感じながら、優しく歌いたい」という。亀山市長は「(長渕の歌唱は)石巻だけではなく、被災地域みんなに呼びかけていただくものと思っています」と話した。

 ◆東日本大震災の石巻市の被害状況

 石巻市役所によると、26日現在で3280人が死亡し、629人が行方不明。市街地が水没し、住宅約2万8000棟が全壊。東北地方の自治体でもっとも多い死者を出した。釜谷地区にある大川小では、川を逆流しあふれ出た津波で全児童108人のうち70人が死亡し、4人が行方不明。甚大な被害を受けた南浜・門脇地区の門脇小は、津波とともに流れ着いた重油に引火し大火事となった。