【2008年3月19日付・日刊スポーツ紙面】

 ポカポカと日増しに暖かくなり、散歩シーズンの到来です。散歩といえば、俳優地井武男(65)が都内各地を気ままに歩き回るテレビ朝日系「ちい散歩」(月~金曜午前9時55分)は、最近の散歩ブームの火付け役的番組と言っていいでしょう。今回は散歩の達人である地井に散歩の面白み、より楽しく歩くためのアドバイスをしてもらいました。

 【のんびりと】番組の話があった時に2年やらせてもらえたらと思ったけれど、スタートしてもう2年たつんだよね。こういう時代だから日常の中でゆったりと、のんびり感のあるものにしたかった。歩くにしても、AからBに行きました、次はここに行きますというのではなく、AからBに行く間の景色の変わり方や、行く間の気持ちの揺れなどを主題にしたかった。散歩に難しい理屈はいらない。心動かせるものに行くということかな。

 【子供心に帰る】この年になっても、子供心に帰る瞬間がある。子供と遊ぶのが面白いから、どこでも街の子供を引っ張り出しているね。ちょっとした公園を見つけたら、ブランコに乗ったり、どこに行くか分からない路地に入り込んだり、それが散歩の楽しみでもあるんだ。番組で絵手紙を始めたのも、うまくないけれど、絵は誰でも描けるんだということを知ってほしかった。

 【自由に】打ち合わせは集合した駅前で簡単にするだけで、どこの店に行くとかは決めない。店に突然入っていって、ダメですって言われることもあるけれど、それもエキサイティングな時間だよ。紀行番組って、スタッフが(画面に)入るのを嫌がるけれど、僕はスタッフが映るのもいいと思っている。だって、一緒に回っているんだからスタッフが映るのも自然だし、スタッフと一緒にやっているという意識を持っていたいからね。

 【街には街の景色がある】もう200カ所ぐらい回ったかな。歩き出すと、風が違うんですよ。道1本隔てただけで、流れている空気が違うんだ。ここは同じというところはまったくない。そこに住んでいる人のにおいも違うし、独特の空気が漂うしね。

 【商店街を楽しもう】商店街は元気であってほしい。商店街の良さは会話だと思う。そこでは大型スーパーにない会話ができるし、魚屋さんのプロ、青果店のプロがいて、いろいろなことを聞ける。そんな店とお客のやりとりが大切だし、それが見直されていると思う。

 【都内も自然がいっぱい】歩いていて感じるのは、緑が意外とあることだね。特に街路樹に興味がひかれた。すてきな街路樹があちこちにある。一番多いのは東京都の木でもあるイチョウだけれど、姫リンゴや柿の木も街路樹になっている。この番組をやらなかったら、気がつかなかったね。

 【古いものを大切に】古いものがポツンとあると、そこに歴史を感じるね。変ぼうする東京にあって、古いものが残っているところには街の深さ、幅を感じる。僕は散歩する中で必ずお寺や神社に立ち寄るけれど、小さなお地蔵さんやお稲荷(いなり)さんがあると落ち着くんだよね。

 【マナーを守って】住宅地に入り込むこともあるけれど、おじゃまさせていただくという感謝の気持ちが大切。自分のゴミは持ち帰るのは当然だし、公園や緑地では木や花を傷つけないのは最低限のマナーだね。

 【今後は】いろいろなところで声をかけられるようになった。俳優地井武男ということを意識せず、皆さんの目線で続けていきたい。都内以外にも行きたいけれど、これまで行ったところでも、駅の北口から回るのと、南口から回るのとではまったく景色が違う。散歩コースは尽きないよ。