萩本欽一(71)が、ほぼ無名の現役大学生芸人タカガキ(24)を最後の弟子にすることを決めた。5日に軽演劇の再興を目指してプロデュースを手掛けた喜劇舞台「おちゃのこ妻妻(さいさい)」の旗揚げ公演を東京・品川のスクエア荏原で行った。かつてコント55号でコンビを組んだ坂上二郎さん(享年76)を相手に激しい突っ込みを入れた欽ちゃんはこの日、タカガキに7分間突っ込み続けるスパルタ指導をみせた。

 欽ちゃんが、意外な男を「後継者」の1人に指名した。この日の本番中、舞台転換の間にステージに上がった芸歴5年の大学生、タカガキに、コント55号の「DNA」を染み込ませた。舞台転換の時だった。舞台スタッフに扮(ふん)したタカガキが、ちゃぶ台を運ぼうとすると、あの手この手で妨害した。「おい、タカガキ!」と何度も名前を呼び、「これが芸能界のなんちゃってだ!」などと突っ込み続けた。やりとりは7分間に及び、コントは予定の倍近い時間になったが、芸歴48年、日本を代表するコメディアンは突っ込みを緩めなかった。2人のやりとりに、場内は爆笑に包まれた。

 「誰かに(軽演劇を)伝えることをしなかった」と自戒を込めて言う欽ちゃんは「いなくなったコメディアンを育て、軽演劇を残したい」として喜劇舞台を企画。欽ちゃんも所属する浅井企画にいるタカガキに白羽の矢を立てた。「しつこくコメディアンのことを聞いてくるの。気分のいいヤツで、察する勘がいいのね」。今回の舞台に抜てきすると同時に、東貴博(43)以来となる5人目の弟子として指導していくことを決めた。

 タカガキは、この日はステージを降りても震えが止まらなかった。「あまりにも緊張しすぎて、何やったか全く記憶がない」。欽ちゃんはそんな愛弟子を舞台終了後も熱心に指導した。「3年でモノにしたいのね」。目尻をいつも以上に下げながら、愛情たっぷりに話した。【山田準】

 ◆タカガキ

 本名・高垣雄海(たかがき・ゆうあ)1988年(昭63)5月16日、東京都生まれ。高1だった04年、同級生とコンビを組んで漫才を始め、08年「クロンモロン」としてデビュー。同年のM-1グランプリ準決勝進出。日大芸術学部在学中。趣味は漫画を描くこと、睡眠。166センチ。血液型A。