知人と共謀して国民健康保険の海外療養費をだまし取ったとして、警視庁組織犯罪対策1課は25日までに、詐欺の疑いで、タレントのローラ(23)の父親でバングラデシュ国籍のジュリップ・エイエスエイ・アル容疑者(53)の逮捕状を取った。国際刑事警察機構(ICPO)を通じてバングラデシュの警察当局にも捜査協力を要請した。ローラは同日昼のレギュラーテレビ番組に出演後に無言で立ち去ったが「とてもかなしいです」とコメントを出した。

 警視庁がローラの父親の逮捕状を取り、国際手配した。組対1課によると、逮捕状の容疑は、バングラデシュ国籍の知人モハマド・アミン・シェリフ容疑者(45=同容疑で逮捕)と共謀し、08年12月~09年1月、バングラデシュの病院でシェリフ容疑者が診療を受けたとする虚偽の診療明細書などを世田谷区役所に提出し、海外療養費約87万円をだまし取った疑い。

 海外療養費は、日本の国民健康保険制度の1つ。被保険者は、海外で病院にかかった場合、病院に支払った医療費の7割の給付を受けられる。在留資格のある外国人は、日本の国保に加入できる。

 ジュリップ容疑者は昨年8月にバングラデシュに出国しており、警視庁はICPOを通じて現地の警察当局に捜査協力を要請している。同容疑者は警視庁に対し、電話で「知らない。はめられた」と説明。バングラデシュからの帰国を拒否しているという。

 シェリフ容疑者は警視庁の調べに対し「ジュリップ容疑者から、もうけ話があると誘われた」と供述。だまし取った約87万円のうち、約40万円をジュリップ容疑者が報酬として受けとったとみられ、警視庁はジュリップ容疑者が詐欺グループの指南役で、グループ全体で1000万円以上をだまし取ったとみている。

 世田谷区役所によると、海外療養費の申請には病院が記入した診療明細書、領収明細書と、外国語の場合は邦訳文の添付が必要だ。しかし、偽造の明細書を提出された場合、チェックすることは難しいという。担当者は「言葉の壁があり、病院が患者の情報を開示するかどうかの問題もある。インターネットで病院名や医師名を確認するくらいしかチェックは行えていない」と話した。<ローラ、FAXでコメント>

 ローラはこの日、ファクスで「今日ニュースでみてとてもびっくりしました。父がご迷惑をおかけしてすみませんでした。とてもかなしいです。本当にごめんなさい」とコメントした。所属事務所は「ローラ本人はまったく把握しておらず、大変ショックを受けております。現時点では何も分からず、コメントする立場にございません。捜査にはできる限り協力させていただきます」としている。

 ◆ローラ

 1990年3月30日、バングラデシュ生まれ。母の両親は日本人とロシア人。9歳で日本に移住。高校時代にスカウトされ、雑誌「Popteen」でデビュー。ほおを膨らませるしぐさと、敬語が使えないタメ口トークで人気に。165センチ。

 ◆海外療養費制度

 国民健康保険の加入者が、国外で病院にかかった場合に支払った医療費について、一部を支給する制度。国内と同様で、基本的に医療費の3割を個人が負担し、7割を給付する。国内で保険適用になっている診療が給付対象で、国内で保険適用外のものについては支給されない。診療を受けた国の医療費が、国内の同程度の診療の医療費と比較して高額だった場合、国内の医療費の7割が支給される。