作曲家佐村河内(さむらごうち)守氏(50)のゴーストライターをしていた桐朋学園大の新垣(にいがき)隆講師(43)は6日、都内で行った会見で、ソチ冬季五輪に出場するフィギュアスケート高橋大輔(27)にわびた。高橋は佐村河内氏が作曲したとされた「ヴァイオリンのためのソナチネ」をショートプログラムで使う。高橋が動揺しかねない事実を本番直前に公表したことを謝罪したが「事実を知った上で堂々と戦ってほしい」と身勝手ともいえる心境も明かした。

 会見では「なぜこのタイミングで告白したのか」と質問が飛んだ。新垣氏は肩をすくめ、恐縮した様子で答えた。「このままでは高橋選手までもが、うそを強化する材料になってしまうと思いました」。高橋がこの曲を使って演技すれば、ますます曲の評価が高まってしまうことに戸惑いがあったという。しかし「同時に彼のショックを考えると、今公表するかとても迷いました」と尻込みもしたという。

 悩んだが、結果的に本番直前のタイミングで告白することを選択した。「このまま私が何も言わず、オリンピックで競技された後に発覚した場合、高橋選手はやはり非常に戸惑うのではないでしょうか」。さらに「『偽りの曲で演技したではないか』と世界中から日本に非難が殺到するかも知れません」と続けた。

 悩んだ末に公表を決意したと釈明したが、高橋にとっては最悪のタイミングといえる。高橋は「聴いた時に『希望』があるような気がした」として「ヴァイオリンのためのソナチネ」を選んだ。使用曲の選択は重要な作業。まったく違う人物が作曲していた事実が、高橋を動揺させる可能性は否定できない。新垣氏は「いろいろと考えた結果、事実を知った上で堂々と戦っていただきたいと思い、このような会見を開かせていただくことになりました」と説明したが、高橋の立場を考えれば、たまったものではないだろう。「高橋選手、そして音楽作品を聴いてくださった皆さまには、本当に申し訳ないことをしたと思っております。深くおわび申し上げます」と頭を下げた。

 佐村河内氏の代理人によると、佐村河内氏は高橋について「最高の演技ができることを願っています」と話していたという。

 同氏の代理人はこの日、高橋の使用曲について「クレジット表記などについて早急に手続きを確認したい」と競技前に対応する方針を示した。