【カンヌ(フランス)19日=村上幸将】福山雅治(44)が男泣きした。カンヌ国際映画祭でコンペティション部門にノミネートされた主演映画「そして父になる」(是枝裕和監督、10月5日公開)の公式上映会が18日夜に開催。福山は、約13分のスタンディングオベーションに感極まり、何度も涙をぬぐった。そして、11日に亡くなった共演者の夏八木勲さん(享年73)の存在を、上映中に感じていたことを明かした。

 エンドロールの最中から、拍手と口笛が鳴り響いた。照明がつくと、福山と是枝監督らの頭上から「ブラボー」の声が降り注いだ。戸惑った福山は「こういう時は、どうすればいいでしょうか?」と是枝監督に聞いた。だが、監督は涙して背中を震わせていた。瞬間、両目から涙がこぼれた。ぬぐっても、ぬぐっても止まらない。ぬれた両ほおが、ライトを浴びて輝いた。

 深夜1時過ぎに取材に応じた福山は、率直に感動を口にした。

 福山

 大変感動しました。泣けてきまして…。泣けてるのは何でだろうと思った時に「是枝さん、良かったっすね」という思いがこみ上げてきて。自分のことでは、なかなか泣けないので…男泣きでした。芝居以外ではあまり泣かないので、(過去、泣いたのは)あまり覚えてないです。

 福山の感情を揺さぶった、もう1人の存在は夏八木さんだった。上映中、福山は、夏八木さん演じる父から「体調を崩した」と連絡があり、実家に駆けつけた場面が映ると、背筋を伸ばした。理解できない、したくもない父から血縁の重要さを説かれる場面は、短いながら物語を左右する重要なエピソードだ。福山はその場面が流れた時、すぐ近くに夏八木さんの息吹を感じたという。

 福山

 見ててくれたのかなと思うくらい、すごくいい作品の撮り方をしていて。この感じを見ててほしいなと、すごく思いました。見てくれてるんじゃないかなという感じがしました。

 是枝監督は、夏八木さん最後の仕事となったフジテレビ系「ゴーイング

 マイ

 ホーム」も手掛けており、「亡くなるまで役者を貫いた方。自分もああいう風に作り続けたい」と感謝した。その上で、04年の「誰も知らない」から9年、カンヌに新作を送り続けてきた思いも込めて「こんなに長く熱い、温かい拍手に包まれたのは初めてです」と言った。1997年の「うなぎ」(今村昌平監督)以来の最高賞パルムドールへの期待が高まる「是枝組」。背中を天国の夏八木さんがそっと押していた。