侍ジャパン先発の石川歩投手(28)が重圧をはねのけた。初回はいきなり無死一、二塁のピンチを迎えたが、菊池の好守備もあって無得点に抑えた。「菊池が良いプレーをしてくれて、すごく楽になった」。3回に同点とされたが、4回を2安打1失点。58球でマウンドを託した。「勝ててよかったです」。マウンド上と同じポーカーフェースで、シンプルに振り返った。

 普段は登板直前に緊張から、えずくことも多いという。極端にネガティブ思考にもなる。代表選出が決定した直後は周囲に「WBCから帰ってきたら、ロッテに俺の居場所はないよ。みんな試合していて、自分はローテに入れず2軍だよ。あいつ、WBCに行ったのに2軍だ、と言われるんだよ」と漏らしていたという。

 ロッテで同僚の吉田によれば「石川さんは『こち亀』の本田です」という。バイクに乗った途端、人格が変貌する人気漫画のキャラクター。石川も普段は弱音を吐くが、マウンド上では別人に変わる。打者に立ち向かう強気へ一転。この日も最速149キロの直球を中心に臆せず攻めた。宝刀シンカー、カーブもさえ、大役を果たした。

 試合後に、表情を変えずに言った。「緊張は全くしなかったです」。反省も忘れない。「打ち取った打球が少なかった。まだ、ボールが高い」。不満も見せたが、上々の快投。今日8日に先発する菅野は言った。「気持ちが入っていた。勇気をもらいました」。石川の力投が、チーム全体に力を与えた。【木下大輔】