フランスで4年に1度の欧州選手権(通称ユーロ)が行われています。ロシアのベンチで喜び、落胆するスルツキ監督の姿を映像で目にして「懐かしさ」と、本当に少しだけですが、これまでのユーロより身近な感じがしました。

 本田圭佑選手がロシアの強豪CSKAモスクワ在籍時、何度かロシア取材の機会を得て、優しいスルツキ監督に本田選手の移籍問題や状況を、つたない英語で無理やり、直撃取材したことがありました。

 ロシアの最終ラインとGKは当時と変わらないCSKAの主力がズラリ。スウェーデンのMFバーンブルームもCSKA所属です。さらに本田選手絡みでいえば、現在所属する名門ACミランからイタリアにDFデシリョ、スロバキアにはMFクカ。元ミランの同僚ではイタリアFWエルシャーラウィ、フランスのDFラミらが奮闘中です。

 サウサンプトンのDF吉田麻也選手にとっても同僚やかつての仲間がたくさん出場しています。イングランドGKフォースターとDFバートランド、北アイルランド主将のMFデイビス、アイルランドのFWロング、ポルトガルのDFにフォンテとセドリック、イタリアFWペッレまで、計7人が現チームメートです。

 さらにイングランドにはDFクラインとMFララーナ、フランスにはMFシュネイデルランなど、元同僚も選出されています。

 香川真司選手、長友佑都選手や岡崎慎司選手もチームメートが複数、大舞台でプレーしています。なじみのある日本人選手を通してユーロを見てみる-。こんな視点だと、より一層、ハイレベルな大会を身近に感じるのではないでしょうか。

 かつて、本田選手はこう言っていました。欧州に渡って間もないころ、日本人選手の評価が不当に低い理由を「地理的に遠く離れているため」とし、覆すためには「日本列島を(欧州の隣に)移動させない限り変わらない。ならば、こちらから近づくしかない」と力説。若手に海外移籍を勧めていました。

 日本サッカーは欧州と比較して、強くなっているのか-。この問題は、欧州選手権視察中の日本代表ハリルホジッチ監督が事あるごとに警鐘を鳴らしているように、根深いものがあると思います。ただ、欧州ビッグクラブ、強豪でプレーする選手が増えユーロという大舞台が、かつてより身近に感じるようになった。これは、日本サッカーの進歩を示す1つの事柄のような気がするのです。


 ◆八反誠(はったん・まこと)1975年(昭50)岐阜県生まれ。98年入社。名古屋でアマチュア野球や一般スポーツを担当し、06年からサッカー担当に。途中、プロ野球中日担当も兼務。14年1月から東京勤務。