【ドーハ(カタール)=10日】日本の「ストーンヘッド」伝説が始まった。1次リーグ初戦でヨルダンに1-1で引き分けた日本(FIFAランク29位)はこの日、ドーハ市内で約1時間半の調整。敗色濃厚の後半ロスタイムに同点ヘッドを決めたDF吉田麻也(22=VVVフェンロ)は、硬くて大きいという頭を武器に尊敬するDF闘莉王(29)超えを誓った。次戦シリア(同107位)は初戦で強豪サウジアラビアに勝って勢いに乗る相手。2大会ぶりのアジア王座奪回へ向けて、吉田の石頭がさく裂する。
ひと晩で主役になった。ヨルダン戦から一夜明け、吉田は気持ちよさそうにバランスボールで体を伸ばしていた。終了間際にチーム最長身189センチが決めたヘッドは、黒星発進を免れる価値あるドロー弾。日本の危機を救ったのは、その硬くて大きい頭だった。
吉田
硬いですね。大きさは…秘密です。(頭が大きいと評判のGK川島)永嗣さんよりは大きいことは認めますよ。ただ、ボンバーっていうより、自分は長いだけですけどね。
長年日本のセンターバック(CB)を支えるDF中沢佑二(横浜)は、代表でDF最多の17点をマーク。04年アジア杯で得点力が開花し、ヘディングの強さから「ボンバーヘッド」と呼ばれる。中沢よりも身長で2センチ上回る吉田は、その強さも武器。石頭伝説には事欠かない。「幼少時に車にはねられて(長崎の)路面電車のレールに頭をぶつけたが、けろっとしていたそうです」という。ほかにも「頭で高級外車の天井に傷をつけた」「ゴール前でクリアしたボールが、ハーフウエーラインまで戻った」などなど。
1次リーグ初戦の9日ヨルダン戦。ゴール前を固めた相手守備陣に決め手を欠き、0-1で後半ロスタイムを迎えた。MF香川のショートコーナーを受けたMF長谷部が、ファーサイドに好クロス。「相手はファーサイドにボールが来たとき、ボールウオッチャーになる。狙い通り」という吉田が飛び込んだ。前半45分には相手MFアブデルファタハのシュートが左足に当たってコースが変わり、先制ゴールを招いていた。痛恨の失点を、値千金のゴールで取り戻した。
昨年1月にVVVへ移籍直後、左足甲を骨折した。オランダでの手術に失敗し、5月に国内で再手術。リハビリ中に何度も名古屋の試合に足を運んだ。初優勝へ突き進む古巣で注目したのは、入れ替わりで名古屋に加入したDF闘莉王。代表通算8得点の先輩は、日本のあるべきCBの姿を見せてくれた。
吉田
闘莉王さんはビルドアップする能力が高いし、起点になっている。守備面でもまだまだ足りないし、得点能力も高い。何よりも存在感が大きかった。すごく手本にしてます。
まさに「けがの功名」で“先生”から学んだ。だが、今回は闘莉王も中沢も故障で不在。体調が戻れば、いずれ代表でポジションを争うライバルになる。
吉田
代表というのは、常に競争の中にいると思っている。それはそれで、競争ですから。少しでも早く追い越せるように、頑張るしかないですね。
この日の練習開始時に空を覆っていたうろこ雲は、終わるときには青空になっていた。次戦は、初戦で前回大会準優勝のサウジアラビアに勝って勢いに乗るシリアが相手。果たして「曇りのち晴れ」となるのか。日本の「ストーンヘッド」が、ザックジャパンを快晴にさせる。【近間康隆】

