リオデジャネイロ五輪代表のMF大島僚太(23=川崎F)が、負けられない初戦で、史上初の初出場初先発で国際Aマッチデビューする可能性が出てきた。6大会連続のW杯出場を目指す日本(FIFAランク49位)は今日1日、W杯ロシア大会アジア最終予選の初戦でUAE(同74位)と対戦する。8月31日、会場の埼玉スタジアムで最終調整。MF柏木が左股関節の違和感で練習を回避し、五輪代表のボランチに出番が巡ってきそうだ。過去、日本代表のW杯最終予選の初戦でAマッチ初出場初先発の例はない。

 MF大島が大一番で抜てきされる可能性が出てきた。ボランチの長谷部と組むとみられていた柏木が、左股関節の違和感で別メニュー調整となった。公開された練習のアップではMF本田、原口、山口、DF酒井宏らを従えて先頭に立った。普段から口数は多くなく前に出ていくタイプではない。先発を任される責任の重さを自覚している表れのようにも映った。

 リオデジャネイロ五輪では日本の計7得点のうち、3アシストなど4得点に絡んだ。日本代表に初招集された6月のキリン杯では出番がなかったが、「五輪をいい大会にした選手がいる。それが誰だったかは皆さんにも分かるでしょう」とほめていたハリルホジッチ監督は「A代表に何かをもたらす」と期待し、再び招集した。出場すれば国際Aマッチデビュー。UAEにとってはデータが少なく秘密兵器と言える存在だ。

 初戦とはいえ、負ければW杯出場に黄信号がともりかねない重要な一戦。それだけに守備面に強みがある遠藤や山口が起用される可能性もあるが、大島なら攻撃的なボランチとして積極的に前に仕掛け、効果的なラストパスを配球できる。先発濃厚な長谷部は「監督も決めかねているようだ」と話した。

 ハリルホジッチ監督からは合宿で「声を出せ」という指導を受けた。だが、「声を出すのもいろいろある。僕は試合中や練習で出せれば。ムードメーカーはやれる人がやって、その人が練習に集中できるようにするのが一番いい」と自分を貫く。「攻撃の部分でアクセントをつけたい。課題の守備も、いい特長の選手がいるので盗んでいければ」と落ち着いている。

 五輪から帰国直後にインフルエンザで体調を崩し、日本代表発表の8月25日には急性腸炎と39度の発熱で練習を休んだ。「まだ五輪の時ほど体調は戻っていない」と言うが、病み上がりの同20日浦和戦と同27日の柏戦でともにフル出場。心身ともにたくましくなった23歳が、日本のスタートダッシュに貢献する。【岩田千代巳】

 ◆大島僚太(おおしま・りょうた)1993年(平5)1月23日、静岡市清水区生まれ。静岡学園中-静岡学園高。高3時に全日本ユース4強。大学に進学しサッカーはやめるつもりだったが、練習参加を経て11年に川崎Fに加入。J1リーグ通算116試合5得点。14年仁川アジア大会ではU-21日本代表の主将を務めた。6月のキリン杯でA代表初招集。168センチ、64キロ。血液型AB。

 ◆W杯アジア最終予選で国際Aマッチデビュー 日本代表ではMF与那城、DF中西、FW呂比須と過去に3人。そのうち先発デビューは呂比須のみ。ブラジル出身の呂比須は最終予選期間中の97年9月に日本国籍を取得し、予選3戦目の韓国戦でデビューした。与那城と中西は初戦デビューも、ともに途中出場。つまり、W杯最終予選初戦でAマッチ初出場初先発したケースは過去にない。なお、ブラジル出身の与那城は最終予選直前に日本国籍を取得。当時34歳だった。

 ◆初戦重要 W杯アジア最終予選は来年9月までの長丁場だが、初戦は10分の1以上の重要性を持つ。最終予選がホームアンドアウェー方式となった98年フランス大会以降、予選を勝ち抜いた延べ18カ国の初戦成績は13勝5分けと負けなし。黒星スタートでW杯に出場した例はない。日本も自国開催の02年大会を除く過去4大会はいずれも白星スタートから本大会出場を決めている。カタール・ドーハでおよそ2週間の短期集中開催だった94年米国大会予選は初戦でサウジアラビアと0-0の引き分け。このときは最終のイラク戦で後半ロスタイムに失点しW杯出場を逃している。