新生アギレ・ジャパンは、最大4カ国の多国籍軍で構成されることが6月30日、分かった。次期日本代表監督就任が決定的なメキシコ人のハビエル・アギレ氏(55)が、メキシコ人のヘッドコーチ、スペイン人のフィジカルコーチを入閣させる可能性が出てきた。ザック体制でのイタリア人グイードGKコーチには続投要請中。U-21日本代表の手倉森監督は内定。初出場した98年W杯フランス大会の岡田第1次政権以降、スタッフが4カ国から構成されるのは異例。サッカー先進国の人材を集め最大7人による新陣容が見えてきた。

 アギレ氏が、2人の仲間を連れて日本にやってくる。日本協会と交渉中の同氏は、年俸や契約期間など条件面の大筋がまとまり、現在はコーチの人選に着手している。新たにスタッフ入りする外国人コーチは最小限にしたい日本協会の要望を理解した上で、ヘッドコーチとフィジカルコーチを探している。コーチ人事は流動的で、1人に絞られる可能性もある。

 ヘッドコーチの候補は3人のメキシコ人。10年W杯南アフリカ大会で補佐したマリオ・カリーヨ氏(58)、06~09年にAマドリードで支えたイグナシオ・アンブリス氏(49)、エスパニョールのアシスタントコーチ、アルフレッド・テナ氏(57)。

 フィジカルは、アギレ氏の生命線。最前線からの激しいプレスと、瞬時の切り替えは運動量が不可欠。フィジカル面の強化は重要だ。02年から13年間支えてきたスペイン人のファン・イリバレン氏(47)が最有力候補。大学で体育学の学位を取得した理論派だ。

 ザック監督らイタリア人スタッフ4人は契約満了で更新しないが、グイードGKコーチの評価は高く、現在日本協会は続投を要請中。原博実専務理事は「まだ(グイードからの返事は)ないよ」と話した。コーチングのレパートリーが豊富で、大切なGKのフィードも改善され、指導力はJリーグクラブ間でも定評がある。残留の可能性は十分にある。

 A代表のコーチングスタッフには、五輪代表監督が加わるのが通例。協会は各年代の意思統一を重視するだけに、手倉森氏はA代表でアギレ・イズムを学び、次世代に伝える役割を担う。さらに、00年から各年代の日本代表テクニカルスタッフを務める和田氏、99年からA代表のフィジカルスタッフとして選手のコンディションを的確に把握する早川氏が残留の方向だ。

 アギレ氏の優れた面として、対話により求心力を高める手腕がある。選手とのコミュニケーションが大きな柱になるが、その土台になるのがスタッフ間の団結になる。与えられた陣容で、最大限の成果を求められるのが、大失速した日本代表の最大の課題だ。

 厳しい環境の下、アギレ氏は信頼できるスタッフとともに、これまでの経験をフル活用し、多国籍軍をまとめ上げ、代表チームの再建に取り掛かる。<アギレ氏とは>

 ◆生まれ

 1958年12月1日、メキシコ市生まれ。

 ◆バスク人

 両親はスペインからの移民で、ニックネームは「El

 Vasco」(バスク人)。

 ◆熱血漢

 サッカーに熱く、メキシコ代表監督時代には、09年ゴールド杯パナマ戦でサイドラインを越えたにもかかわらずドリブルを続けた相手選手に蹴りを入れて阻止し乱闘に発展。退場処分となり3試合の出場停止処分を受けた。メキシコ協会は2万5000ドル(約250万円)の罰金を科した。

 ◆人心掌握術

 「お前たちはできる。その力がある」が口癖。選手たちからの信頼も厚く、精神面のコントロールに重きを置く。

 ◆堅守速攻

 得意とするスタイルは堅守速攻。全体をコンパクトに保つことで高い位置からプレスをかけ、ショートカウンターから得点を奪う。