日本サッカー協会が、次期日本代表監督として元ローマ監督のルチアーノ・スパレッティ氏(55=イタリア)を第1候補に挙げていることが11日、分かった。欧州の有力代理人らによると、すでに代理人サイドと接触しており、近日中にも条件提示をするとみられる。交渉が難航した場合に備え、カタール1部レクワイヤ監督のミカエル・ラウドルップ氏(50=デンマーク)を第2候補、さらに元ウォルフスブルク監督のフェリックス・マガト氏(61=ドイツ)を第3候補とし、すでに条件面の調査を終えた。

 日本サッカー協会が絞り込んだ次期監督の第1候補はスパレッティ氏だった。同氏は昨年3月にロシア1部のゼニトの監督を解任された2カ月後にACミランの監督候補に挙がるなど、欧州では引く手あまた。来季に向けて、すでにビッグクラブなどから就任のオファーや打診を受けている可能性はあるが、渡欧中の霜田正浩強化担当技術委員長(47)が、近日中に交渉を始めるとみられる。

 霜田委員長は渡欧前、次期日本代表監督について「今までの代表の流れを絶ち切るような人選はしない。ポゼッション(ボール支配率)を大事にして、展開によってはリスクを冒してでも勝負できる人。基本は攻撃サッカー」と話した。スパレッティ氏は05-06シーズンから率いたセリエA・ローマ監督時代、FWを最前線に配置しない「ゼロトップ」を駆使。「カテナチオ」と呼ばれる堅守からの速攻が全盛だった当時のイタリアで、異質なポゼッション重視のサッカーを展開した。

 09年12月から監督に就任したゼニトでは、守備を再整備して低迷続きだったクラブにリーグ連覇をもたらした。日本人特有の俊敏性を最大限に生かす、日本代表が目指す方向性と一致する点が多い。

 交渉が難航し、折り合わなかった場合の候補は、カタールのレクワイヤで監督を務めるラウドルップ氏だ。攻撃サッカーをモットーとし、日本代表が目指す方向性は同じ。カタールの経験を通してアジアのサッカー、特に中東のサッカーを知る点はW杯アジア最終予選での強みになる。同氏の年俸はスパレッティ氏より低いとみられるが、所属クラブとの契約を4カ月以上残しており、引き抜きには違約金が必要となる。

 2人との交渉がまとまらない場合は、ブンデスリーガでMF長谷部やDF内田らを指導したマガト氏と交渉することになる。「鬼軍曹」の異名で、規律を重んじるスタイルはアギーレ前監督と路線は近い。

 W杯アジア1次予選開始まで約4カ月。霜田委員長は渡欧前、「本来なら、欧州での十分な実績に加え、W杯を指揮した経験者に来てほしい気持ちもあるけれど、今は非常事態。いい監督を連れてくることが最優先です」と話した。本命取りに成功するのか?

 いよいよ本格交渉がスタートする。

 ◆ルチアーノ・スパレッティ

 1959年3月7日、イタリア・チェルタルド生まれ。現役時代はセリエC(3部)で守備的MFとしてプレー。監督としては、最初に率いたエンポリを95年からの2シーズンでセリエCからセリエAまで浮上させた。その後、サンプドリアやベネチアなどを経て、02年に2度目のウディネーゼ監督に就任。04-05シーズンに4位でクラブ史上初の欧州CL出場に導いた。05-06シーズンから指揮したローマではFWを置かないゼロトップを採用し、11連勝を達成し、イタリア杯も2度制した。09年12月にはロシアリーグのゼニトの監督に就任。10年、11-12年(秋春制に移行したため)シーズンに連覇を成し遂げた。