世界一の母国に勝利したい-。ブラインドサッカー日本代表のFP佐々木ロベルト泉(37=Avanzareつくば)が20日、東京・八王子市で行われた代表強化合宿に参加し、20年のリオデジャネイロ・パラリンピックへの思いを語った。

 「ダメ、コミュニケーション!!」。コートに佐々木の大声が何度も響いた。相手を振り切るドリブル、シュート力、体幹の強さは抜けている。佐々木は「リオへ出場するためには、技術よりも気持ちが大事。声を出してコミュニケーションを取らないと、結果は出ない」と話した。

 ブラジル・サンパウロ出身の日系3世。16歳で父を亡くし、97年に兄弟の生活を支えるために18歳で訪日した。日本語がほとんど話せず、“3K”こと「きつい」「汚い」「危険」の肉体労働の職場を転々とした。06年11月、自動車事故で心臓を損傷し、顔を骨折。意識が戻った時は両眼球が摘出されていた。「『水がワイン』になったような正反対な気持ちで、『人生終わった』と思った…」。

 転機は、09年にマッサージ技術を学ぶために筑波技術大へ入学したことだった。知人に「ブラジル出身なら、ブラインドサッカーをやろうよ」とクラブチームへ誘われ、日本選手権に出場するまで上達した。「ブラジルでははだしで、新聞紙を丸めたボールを蹴っていた。スパイクを履いたのは日本に来て初めてだった。日本は本当に豊かな国でうらやましい」。

 13年末には日本国籍を取得。今年9月にはリオ大会の出場権を懸けた「アジア選手権」が都内で開催される。「夢はリオ大会で母国に勝つこと。(04年のアテネ・パラリンピック大会から3連覇中で)世界一のブラジルに勝つためには、まずは『絶対に負けない』という気持ちが大切。日本はもっと気持ちを強化する必要がある」。ラテン系の“ムードメーカー”が1年後の夢実現に向けて、チームをけん引する。