G大阪FW宇佐美貴史(23)が、川崎FのFW大久保に完敗した。今季ホーム公式戦8試合目も無得点に終わり、相手エースには決勝点を許した。前半に宇佐美が大久保の背後から仕掛けた激しいプレスが“火種”となり、競り合いで逆に肘打ちを食らい左あごから出血。一触即発の小競り合いでは「点をとってから言えよ」と“口撃”を受けてしまった。チームはホーム公式戦で5連敗となった。

 超満員の市立吹田スタジアムが白熱した。前半27分。中央でボールを持つ大久保に宇佐美が猛ダッシュした。後ろから激しいプレスを掛けて相手を倒した。判定はノーファウル。しかし、その3分後、目の前で相手エースに先制点を決められた。完璧な攻撃だった。

 同39分に“事件”は起こった。宇佐美が敵陣のペナルティーエリア付近での競り合いで、大久保の右肘を左あごに受けた。鮮血をしたたらせながら、10歳上の先輩に「何すんだよ!」と食って掛かった。すると「点取ってから言えよ! それでも代表か!」と返ってきた。勝利に懸ける両エースの気持ちに火が付き、小競り合いに発展。その場は収まったが、無得点の宇佐美は“口撃”に完敗する格好となった。

 相手は3年連続得点王でJ1最多得点記録保持者。昨季も得点王争いの最中、目の前で決められた。宇佐美は普段から「相手のことは関係ない。自分がどれだけゴールを取れるか」と話すが、新旧日本代表対決で珍しく気持ちがあふれ出た。この日はシュート3本も不発。試合後は傷口をテープで覆い「最後の(シュートの)アイデアを振り絞ってやる必要がある。意表を突くプレーが出てくれば」と反省するしかなかった。

 これでホームは公式戦5連敗。新本拠地で1勝1分け6敗と鬼門脱出といかなかった。すでにアジア・チャンピオンズリーグで敗退し、リーグ戦でも調子が出ない。長谷川監督は「なかなか最後決め切ることができず悔しくて仕方ない」と唇をかんだ。波に乗りきれないエースを象徴するような一戦となった。【小杉舞】