大分なんぞ、恐るるに足らず-。横浜が、前代未聞の「油断奨励作戦」で混戦のJリーグをかき回す。J1は27日に第27節の4試合が開催され、J1残留争いからの完全脱出を狙う13位の横浜は、ホーム(日産ス)で首位大分と対戦する。26日に横浜市内で調整を終えた木村浩吉監督(47)は、選手が必要以上に相手を警戒しないよう、大分を挑発する発言を連発。大量得点を奪う方針を打ち出すなど「楽勝ムード」を演出した。経験が浅い新興勢力を、かつての王者が貫禄(かんろく)で打ち負かす。

 勝負の世界でのタブーを、あえて犯して見せた。木村監督は、選手たちの間で時折笑い声も飛び交う前日練習を見届けると、最後のひと仕事に取りかかった。「大分が首位だなんて、信じられないよ」「楽勝するような気がするね」「1点取られて、取り返せないようならやらない方がいい。2点、3点を取りに行く」。ミーティングで選手に伝えたように、大分をまるで挑発するかのような発言を繰り返した。

 負ければ、再び来季J2降格の陰が忍び寄る一戦で、相手は現在リーグ戦13試合負けなし(9勝4分け)の首位。本来ならば「油断大敵」の4文字すら、口にするのがおこがましい。それでも、立場が逆転したかのように指揮官が冗舌だったのは、理由がある。前節川崎F戦は前半42分に先制点を奪いながら勢いに乗れず、引き分け。選手が1点を守り切ろうと、消極的になった。「相手が首位だからと構えに入ると、フロンターレ戦のようになる」という反省があった。

 監督の思いを即座にくみ取った栗原は「相手は横綱で、おれらは十両。胸を借りるつもりで行く。とはいっても、朝青龍のように、いつ(黒星が)来るか分からないでしょ。足元をすくう」とニヤリ。中沢も「選手は分かってますから。ビビってはいないけど、相手は必死に来る。残留争いを抜け出して、上位を狙いたい」と気を引き締めた。

 戦力が入れ替わったとはいえ、横浜には修羅場をかいくぐって栄冠を手にした歴史がある。優勝争いの経験が浅い大分に、かつての王者の貫禄でプレッシャーをかけ、J1残留へ前進する。【山下健二郎】