J1自動昇格圏内の2位浮上のカギは、FK職人が握っている!

 28日の水戸戦で、6年ぶりの5連勝と4カ月ぶりの2位浮上に挑むJ2仙台の手倉森誠監督(40)が27日、MF佐藤由紀彦(32)をジョーカーに指名した。23日の湘南戦で決勝弾をアシストした高精度FKが、指揮官のハートをわしづかみ。1枚目の交代カードで、投入する意向を示した。佐藤も「試合を決める一撃を見せる」と鼻息を荒くした。

 “職人”が蹴り出す球足の速いクロス目がけてFW平瀬、ナジソン、DF岡山らがジャンプ一番、飛びつく。この日のセットプレー練習で、佐藤が珍しく先発組のキッカーを務めた。

 何度蹴っても狂いなく、急激にカーブする弾道を描く。佐藤が心がける「触るだけで入るボール」を、GKとDFの間に蹴り込んだ。

 先発組に佐藤の球質を確認させた意図を、手倉森監督はこう説明した。「湘南戦でも最後の最後にいい仕事をした。由紀彦の出場時間を増やすことも考えているし(交代カードの)1枚目も考えている。先発組が点を取るに越したことはないけど、由紀彦のキックは武器だ」。FKの機会を高精度キックの佐藤に、できるだけ多く与えたい考えだ。

 わずかな出場時間でも「結果を出すのが使命」というのが佐藤の口癖。突然の出番に備え、ベンチでシミュレーションを欠かさない。佐藤は「ウチには岡山、ナジソン、平瀬、千葉とヘディングが強い選手が多いから、蹴るのも楽しい」と不敵に笑った。

 セットプレーは「蹴る側と受け手の信頼関係が一番大事」と佐藤は話す。その点、ターゲットになることの多い岡山は「ピンポイントで来るし、ユッキー(佐藤)は途中出場で疲れがない分、キックが正確」と信頼は厚い。

 東京、柏でJ1昇格を果たし、J1通算でも148試合に出場。経験豊富な佐藤に託される期待は大きい。「またゲームの締めくくりを演出する仕事を見せて、勝たなければ」。職人の頭には、自らの一刺しで2位に浮上するシーンが、描かれている。【山崎安昭】