<J2:仙台1-0札幌>◇第1節◇8日◇札幌

 7シーズンぶりのJ1復帰へ「手倉森ファミリー」が白星発進した。昨季3位で入れ替え戦の末に昇格を逃した仙台が、昨季J1の札幌にアウェーで1-0の開幕戦勝利。敵地の波状攻撃に防戦一方だったが、後半21分にDF菅井直樹(24)が挙げた決勝点を守り抜いた。6シーズンぶりに指揮官交代がなく、手倉森誠監督(41)の下でベガルタのサッカーを成熟させる今季。一枚岩となって昇格をつかむ。

 ロスタイム5分。選手が口々に「数字以上に長かった」と体感した中で猛攻をしのぎ、勝利のホイッスルが響く。札幌ドームが静まり返った直後、仙台サポーター席から歓喜の声。手倉森監督は「去年なら引き分けの場面だけど、キャンプで『どんな場面でも試合をコントロールしろ』と口酸っぱく言って成長した。恩師の石さん(札幌石崎監督)にも勝てたし、正直うれしい」とスタッフと抱き合い喜びを爆発させた。

 昨年の屈辱を胸に刻んで試合に臨んだ。J1磐田に敗れた入れ替え戦の映像をキックオフ直前のロッカールームで鑑賞。手倉森監督は「この入れ替え戦より緊張するか?

 しんどい試合があるか?」と選手を鼓舞した。手倉森流のモチベーション向上術が、昨季は引き分け癖に泣いたチームに粘りを呼び覚ました。

 03年のJ2降格以降初めて指揮官交代がなく、前年のサッカーを継続できる今季。コーチを含め、仙台を04年から見てきた指揮官は「監督が代わっちゃうから選手は毎年、個人をアピールすることに必死だった。でも、今年は違う。組織の一員として、仙台の戦術に合わせようと努力してくれる」と、好影響を感じながらキャンプを充実させた。

 昨秋の解任騒動を乗り越えて一丸となった。人望の厚い手倉森監督の続投。MF斉藤が「監督が代わってたら完全移籍してなかったかも」と話せば、MF梁も「監督に必要とされたから残留した」。オフに同監督から食事に誘われ残留を説得されたMF関口は「監督や(MF)梁さんがいなくなって去年のサッカーが続けられなくなったら、自分も残留した可能性は低い」と言い切る。「手倉森ファミリー」でつかんだ結束の勝利だった。

 前年J1の札幌をたたく滑り出しにも、手倉森監督は「今日は51試合分の1。昇格まで勝ち続けないと」と手綱を引き締めた。ベガルタの捲土(けんど)重来のシーズンが幕を開けた。【木下淳】