Jリーグは15日、東京・文京区のJFAハウスで理事会を開催し、大雨によるピッチコンディションの不良のため中止となった12日の鹿島-川崎F戦(カシマスタジアム)の扱いを協議し、10月7日に同スタジアム(時刻未定)で、後半29分の中断時点の状況から再開すると発表した。Jリーグで開始後に中止となった試合が、後日再開されるのは初めて。1-3とリードされていた鹿島側が「試合成立」を求めたのを覆し、残り16分間、試合を行うという異例の決定となった。

 異例の決定だった。選択肢は3つあった。(1)再試合(2)試合成立(3)試合続行。理事会で(1)はほとんど議論されず、(2)と(3)が対象となった。試合をリードされていた鹿島の大東社長は「試合成立でもいい」と発言。負け試合になるが、運営上の問題などから苦渋の選択だった。川崎F側も過密日程などで同意見だったが「公平さに欠ける」と、ほかの理事は反発したという。

 鬼武チェアマンは「残り時間をやるのが、もっとも公平」と、試合続行が決まった経緯を説明した。理事会前には理事でもある鹿島大東、川崎F武田両社長に「試合続行でどうだろう」と打診し、理事会でも試合続行を自ら切り出した。意見は噴出したが、最終的に多くの理事が賛同。「多数決ではなく、議論の末に全員一致で決めた」と、理事会の総意だと強調した。

 鬼武チェアマンは、決定の理由について「74分終わっている」「点差がついている」を挙げた。ただ、後半での中止も点差があっても、過去5回は、いずれも再試合だった。これらの前例から今年2月にJリーグ規約第63条を「中止試合の勝敗決定は理事会で協議」から「原則再試合」に変えたばかり。試合実施要項が「理事会で協議」のままだったために混乱を呼んだ。

 同チェアマンは規約の不備を認めながらも「規約の見直しも検討しなければ」と、再改正の必要性を口にした。「例えば前半の中止なら再試合、後半なら試合続行」とも話した。明確な規約づくりは必要だろうが、点差の問題、さらに試合の注目度の高さなども含めてルールづくりは難しい。

 創設後17年しかたっていないJリーグは、当初から「走りながら考える」だった。何か起こるたびに前例を踏襲し、それをルールにしてきた。これまでは「中止=再試合」だったが、今回はこれらの前例、さらに規約にある原則をも覆す決定を下した。今後は、中止があるたびに、その取り扱いで紛糾するはずだ。明確な規定づくりは難しいが、今のままでは再び同様の問題が起きることは確実だ。【荻島弘一】