王座奪回のカギを握る男が、上々の「浦和デビュー」を飾った。広島から今季加入したMF柏木陽介(22)が、宮崎キャンプ6日目の20日、宮崎産業経営大との練習試合に先発出場。持ち味の運動量を攻守両面で発揮すると、前半30分には相手DF3人を置き去りにするスルーパスでFW高崎のゴールをアシスト。試合も6-0で快勝した。右ひざ痛の影響で練習合流が遅れたが、移籍後初の実戦で、いきなり新司令塔の片りんを見せた。

 新天地での決意を込めたラストパスだった。前半30分。柏木は相手エリアの空いたスペースに走り込んでMF鈴木からのパスを呼び込んだ瞬間、FW高崎の特長を思い起こした。「足が速いのは分かっていた。体がデカイけれど、ボールをキープするタイプではない」。DFの背後からゴール前へ駆け込む188センチのさらに前方へ、利き足とは逆の右足でワンタッチの高速スルーパス。追加点をアシストした。

 日本代表のイエメン遠征で右ひざ痛を悪化させ、この日が宮崎キャンプでのチーム合流2日目。まだコンディションは万全にほど遠いが、柏木は「頭で考えていることと体の動きが合わないけれど、2~3本、やろうとしているパスは出せたと思います」と浦和移籍後初の実戦で結果を出し、安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

 別メニュー調整中も、チーム練習をつぶさに観察し、新しい同僚たちの特性を頭にたたき込んでいた。高崎へのパスも「練習を見ていて何となく分かった。寿人さん(広島FW佐藤)に出すつもりで。いいところに走り込んでくれた」という。高崎も「得点につながる理想の形。パスの出し手と受け手の関係がよかった」と新戦力同士のホットラインに手応えをつかんだ。

 パスサッカーへの移行元年だった昨季、浦和はサイドへの攻撃展開で手数をかける一方で、ゴールへ向かう推進力に欠けた。フィンケ監督は「私がなぜ、柏木を獲得したかったのかが分かるでしょう。優れた選手であり、しっかりと戦術眼を持っている。そして、テンポの切り替えをピッチ上で表現できる。主力として貢献してくれると思う」と柏木への期待を口にした。

 練習試合2連戦となる21日は、昨季まで所属していた広島と対戦する。柏木は「出場したい。対戦が楽しみです」と闘志を燃やす。V奪回の切り札が、浦和の新たな可能性を感じさせるデビューを飾った。【山下健二郎】