Jリーグは3月6日に開幕する。本拠地に仙台を迎えるJ1磐田は右脛骨(けいこつ)骨折からの復帰を目指すGK川口能活(34)が2日までに開幕を断念。それでも回復には明るい見通しで、日本代表MF中村俊輔(31)と対するナビスコ杯横浜戦(4月14日)に新たな照準を合わせた。

 川口は負傷前と変わらぬジャンプで、ボールに食らいついた。低い重心から思いっ切り踏み込み、横っ跳びで懸命に左手を伸ばした。実戦さながらの動きでシュートを受け続けた。川口は「順調にきている。1つ1つクリアしていきたい。あとはボールフィーリングを徐々に取り戻していければ」。自ら志願してメニューを追加するほど、復帰へ近づいている感触を持っている。

 まだGK練習に合流はできていない。目標としていた開幕戦出場は断念する。しかし「開幕(の可能性)は半々くらいだと思っていたから」と焦りはない。この日の練習後、4日に森下申一GKコーチ(49)と、負傷後初めて個別練習をすることが決まり回復ぶりをアピールする。9日には検査を予定しており、同コーチは「まだ川口も老け込む年じゃない。週1回2回と増やしていければ」と話した。

 開幕戦に代わり、新たな目標も浮上した。横浜M(現横浜)時代、一緒にプレーした日本代表MF中村俊のJ復帰が決定。クラブでも代表でも、常に同じチームで戦ってきたが、今季初対戦が実現する。中村俊がプロ入りした97年から、食事をともにし練習では居残りでシュートを受け続けた。2日付の日刊スポーツ独占インタビューでも「能活さんの影響は大きいよね。オレの師匠」と中村俊が言うほど慕われている。

 直接対決は4月14日のナビスコ杯が直近。5月にはリーグ戦もある。「俊輔とはよく一緒にいたし、戦ってきた仲間だから絶対に負けたくない。それを目標にここまでこれたと言ってもいいくらい」と、川口は待ち遠しそうに話した。その先にあるW杯出場もあきらめていない。「対戦もしたいし、また代表で一緒にプレーしたい」。開幕を断念した逆境男の明るさこそ、長いシーズンを照らし続ける。【栗田成芳】