<J1:広島3-1湘南>◇第3節◇20日◇平塚

 広島のFW佐藤寿人(28)が、W杯へ猛アピールをした。湘南戦の前半21分にMF山岸の右クロスに反応して左足で先制ゴール。同29分にも再び山岸のクロスに飛び出して右足で加点した。「狙っていた」というハットトリックは逃したが、2得点でチームは快勝。佐藤自身も通算3ゴールで得点ランク首位に立った。

 ゴールは、物議をかもした開幕清水戦のPK以来。DF槙野とのトリックプレーだが、3日後に松崎審判委員長が「違反だった」と会見した。1度認められた得点は覆らないが、ルール違反だったのは事実。「多くの方に迷惑をかけて申し訳ない」と振り返った。

 もっとも、後悔はしていない。「ルールを知らなかったのは反省するけれど、点を取るために知恵を絞り合った結果」と言って胸を張った。「いい勉強になりました」とも。体を張り、頭を使って、強欲にゴールを狙う姿勢があるからこそ、170センチの小柄な体でゴールが奪える。

 「W杯のことは別に。今はチームのために点を取ることだけです」と話した。06年、リーグ戦で得点を重ねてアピールしながら、W杯代表から落選した。マスコミの取材に常に誠実に答える佐藤が、その時だけは会見を拒否。それほど悔しかった。だから「アピール」の言葉は封印した。

 もちろん、W杯への思いは強い。「当然、行きたいです」と本音も口にした。Jリーグの成績だけでW杯へ行けるとは思っていないが、Jリーグで結果を出さなければW杯は遠ざかる。「リーグ戦もACLも、点を取って勝ちたい」。強欲に得点を狙う佐藤の真のゴールは、南アフリカだ。【荻島弘一】