J1仙台MF千葉直樹(33)が引退表明から一夜明けた3日、思いの丈をファンに届けた。地元の東北学院高から96年に入団。前身のブランメル時代から知る唯一の現役選手として15年間を駆け抜けてきた。「通用せず2年くらいで辞めると思った」というプロ人生のスタートから「ミスターベガルタ」と呼ばれる存在になった歴史を振り返り、仙台一筋のクラブ愛と引退理由を穏やかに口にした。
晴れやかな表情だった。クラブハウスの会見室から報道陣があふれ出る、近年では最も注目された会見。「すごい人」とおどけた千葉が、静かに語り始めた。
千葉
理由は体力面とかいろいろあるけど、一番はチームが成熟したから。若い選手が成長して、未来の仙台に希望を感じたので引退します。あと1カ月。口にすると寂しいですよね。
開幕前から引退を決めていた。当初はW杯中断期間に発表する方針だったが、チームは中断期間を挟んでリーグ14戦勝ちなし。責任感の強い男は言い出せなかった。だが、前節京都戦に勝って残留が現実的になった。機が熟した。地元のクラブでキャリアを全うし、自ら幕を引くことのできる選手など少ない。
千葉
辞めれば必ず「またやりたい」と思うはず。でも、自分で引退を決められるのは幸せ。しかも地元一筋だから。最高に幸せ。
入団した96年。当時のチームには、W杯優勝経験のあるMFリトバルスキーや94年のJリーグ得点王のFWオルデネビッツがいた。
千葉
通用せず、2年くらいで終わるのかなと。ここまで長くプレーできるなんて夢にも思わなかった。
大学に通いながらプレーしていた地元っ子が、気付けば15年。さらに早い段階での引退も移籍も考えた。
千葉
成長するために仙台を離れようと思ったこともある。でも仲間がいた。有名でもなかった高卒の僕を育ててくれたクラブ。慰留されれば、逆らえないほどの恩を感じていたから。
12月4日の最終節。本拠地での川崎F戦で引退セレモニーが予定されている。
千葉
ボロボロ泣いてしまいそう(笑い)。メッセージを出すとか考えたんだけど、やっぱり自分の口で皆さんに感謝したいから。
最後に付け加えた。「本当の別れは、もう少し先。15年間の最後は笑って終わりたい」。残り6試合で2度目のJ1残留を遂げ、ミスターベガルタが静かにスパイクを脱ぐ。【木下淳】