「ミスター人格者」の手腕に注目だ。今季J3に参戦する福島ユナイテッドの栗原圭介新監督(40)が8日、福島市内のホテルで就任会見を行った。現役時代は6クラブを渡り歩いた苦労人。トップチームの指揮は未経験だが、人間性を高く買われての抜てきとなった。初々しい青年監督が、福島初のJクラブに発展の土台を築く。

 緊張感をにじませる栗原新監督が、力強く所信表明した。「不安も期待も両方あるが、やるしかない、やらなきゃいけないという気持ち。微力ながら、全身全霊を懸けて、皆さんと一緒にこのクラブを大きくしていきたい」。神戸のスクールコーチや下部組織の監督、甲南大ヘッドコーチを歴任。昨年3月にS級ライセンスを取得した。J3という未知のカテゴリーで新たなスタートを切る。

 クラブ側の信頼は絶大だ。竹鼻GMが湘南のクラブスタッフ時代に現役選手だった栗原監督と知り合いだった縁もあり「かなり早い段階」から一本化して交渉を開始。「チームの強化だけを考えるようなサッカー職人ではない。福島の現状、クラブの歴史を理解し、みんなを同じ方向に向かせられる」と説明。湘南で時崎前監督とも一緒にプレーしており、引き継ぎもスムーズに行われたという。

 鈴木社長は「彼をひと言で申すなら『ミスター人格者』」と表現。神戸での現役時代、試合前は必ずサポーターにあいさつしてからアップを始めていたこと、V川崎というビッグクラブでキャリアをスタートさせながら、その後は何度もトライアウトを受けてはい上がってきたエピソードを披露し「僕がほれました。ドラフト1位指名に来ていただいた」と笑みを浮かべた。

 複数年契約で中長期的な強化を託される栗原監督は、理想の監督像に神戸時代のスチュアート・バクスター氏を挙げた。「レベルが上がれば勝つのは難しいが、かといって引いて守るのではなく、自分たちでボールを握って相手を動かしていくサッカーをしたい。その基盤づくりの1年にしたい」と目標を設定。新米監督が、福島ユナイテッドに新風を吹き込む。【亀山泰宏】

 ◆栗原圭介(くりはら・けいすけ)1973年(昭48)5月20日、東京都大田区生まれ。桐蔭学園高から駒大を経て、96年にV川崎入りし、同年に天皇杯優勝を経験。その後は平塚、V川崎、広島、湘南、新潟、神戸、栃木と渡り歩き、09年限りで引退。J1通算156試合出場、28得点。10年から神戸スクールコーチ、昨年は神戸伊丹U-15監督。11年から12年は甲南大ヘッドコーチも兼務していた。13年にS級ライセンスを取得。173センチ。