<J2:千葉2-1愛媛>◇第10節◇4日◇フクアリ

 クラブの偉大なOBへ捧げる1勝だ。千葉が同点の後半45分にFW深井正樹(30)のボレーで決勝点を奪い、愛媛を下した。2日に亡くなった八重樫茂生氏(享年78)は古河電工サッカー部からJクラブ立ち上げの際に尽力した1人。試合前には追悼の映像を流し、選手、スタッフ、職員は喪章をつけて試合に臨んだ。日本サッカーだけでなく、クラブの礎を築いた故人へ恩返しとなった。

 試合終了間近に歓喜が待っていた。ロングボールを途中出場のFWオーロイが頭で落とし、深井が左足を合わせるとゴールに吸い込まれた。八重樫氏への思いがこもったかのような結末。試合後、ドワイト監督は「重要な人だと聞いている。選手はリスペクトを持っていた」と故人への思いを口にした。

 八重樫氏はチームの立ち上げの際に育成部長として参画。「選手育成にはコーチを育てなければいけない」をモットーに掲げていた。永井良和初代監督、清雲栄純・現大宮アドバイザーや岡田武史前日本代表監督ら幾多の指導者をクラブは輩出。英国からボビー・チャールトン氏を招待しコーチング哲学を注入するなど、クラマー氏の教えを後進に伝えてきた。

 当時、強化部長として八重樫氏と行動を共にしていた川本治氏は「選手を買い集めるのではなく、ユースの基礎を作ってくれた」と思い出を口にした。「表だって何かをやるというよりも、見えないところで支えてくれる人だった」と、その人柄をしのんだ。サッカー界全体で功績をたたえる機会を持ちたいという意向も示していた。

 この日の試合会場フクアリを、同氏は訪れたことがなかったという。関係者は「いつ来てくれてもよかったのに、もうチームを離れたからと言っていらっしゃらなかった。試合に招待すればよかった」と悔やんだ。主将のMF佐藤勇は「話を聞けばすごい人だったんだと。J1復帰して、恩返しをしたい」と言葉に力を込めた。八重樫氏の精神は、20年を経て脈々と受け継がれている。【加納慎也】