<J2:札幌2-1東京>◇最終節◇3日◇札幌ド

 エースの右足が札幌を昇格へと導いた。MF内村圭宏(27)が、今季3度目の1試合2発で難敵の東京撃破に大きく貢献した。前半40分にMF古田からのパスに倒れ込みながら泥臭く押し込むと、同ロスタイムにカウンターから鮮やかに追加点を奪った。札幌に移籍した昨年は、持病の腰痛などの影響もあって5得点に終わったが、今季は12得点と主役を張り続けた。

 ピッチの真ん中で大の字になって泣いた。後半25分で途中交代し、ベンチにいた内村は、試合終了と同時にピッチにいる選手1人1人を迎い入れ、抱きしめた。そのままあおむけに倒れ込んだ。目には大粒の涙。ぬぐってもぬぐっても止まらない。心地よい疲労感と3万9243人のサポーターの大声援を聞きながら見上げる景色は格別だった。「プロ生活で今年がダントツでいい1年だった。自分が貢献して勝てたことがうれしい」とかみしめるように話した。

 すべての思いを右足に込めた。試合開始から東京に押し込まれ、ボールを回され続けたが我慢し、その時を待った。前半40分、MF古田からのボールを倒れ込みながら右足で押し込んだ。同ロスタイムには、右サイドを突破したFW近藤からのパスを同じ右足で思い切り、蹴り込んだ。地響きのような大歓声。両手を広げ、ペロリと舌を出してこたえた。

 大分時代の05年最終節でプロ初ゴールを上げた、同じ12月3日に今度は昇格を決める2点で新たなメモリアルデーにした。「めっちゃ気持ち良かった。2点目は(近藤)祐介が1人かわして良いボールをくれた。おいしいところは全部持っていった感じ」と振り返った。

 ボロボロの体と心を奮い立たせ続けた。昨年、自身を苦しめた持病の腰痛は、今季も常につきまとった。痛み止めを飲んだ昨季、体のキレを失い不調に終わった。その反省から、今季は決して口にしなかった。腰を押さえ、足を引きずる痛々しいシーンは何度もあった。さらに開幕直後、練習中に右足アキレスけんを痛め、9試合欠場した。「腰は痛いけどそんなこと言ってられなかった」。満身創痍(そうい)の体にむち打ち、走り続けた。

 06年オフに大分を戦力外になった。愛媛に移り、体幹などで肉体改造を施し、61キロしかなかった体を67キロまでビルドアップした。09年に自身最多18得点を挙げ、札幌に移籍した。ズタズタだった心のピースをひとつひとつ拾い集め、自信に変えてきた。「しんどかった分、成長できた。けががあったから乗り越えられた。こんな思いができるならもっとしんどくなっていい」。今は笑い話にできるほど強くなった。

 夢にまで見たJ1の舞台だ。「そこに行きたくてずっとやってきた。厳しい世界でも楽しみ」。ひとまわり大きくなったエースが、そこにいた。【松末守司】