堅実路線で恩返し-。札幌の新監督に決まった財前恵一氏(44)が14日、札幌市内で記者会見に臨んだ。緊縮財政下での就任だけに、現時点で補強のリクエストは封印。ユース出身者ら若い戦力を中心に、自動昇格の2位以内ではなく、あえて昇格プレーオフ圏内の6位以内を目標に掲げた。初のOBで北海道出身者の指揮官。故郷への恩返しの思いを胸に、J1再昇格を目指す。

 北海道が生んだ天才的MF財前恵一が、監督になって帰ってきた。胸には黒字に赤ラインのオフィシャルネクタイ。U-18コーチだった09年以来、4年ぶりに故郷・北海道クラブの一員になる。「北海道のクラブを強くしたかった。機会をもらえて大変うれしい。攻守一体。全員攻撃、全員守備のサッカーを目指す」。緊張した面持ちに、決意の強さがにじみ出ていた。

 J2からの出直しとなる来季に向け、クラブも最高の人材獲得に成功した。三上強化部長は「攻守両面で全員で戦えること、ボールを握るサッカーを目指せること、選手のマインドをつかめること、若手育成ができること。この4点に合致した」と招聘(しょうへい)に至った理由を説明した。

 U-15、18の監督、コーチ経験があり、FW横野以下、ユース出身選手の特長、性格を知っている。「それぞれが成長している。見るのも楽しみだし、期待している」。トップコーチ時代の04~06年にはMF砂川も指導している。U-18出身で来季、東洋大から新加入するDF松本含め、11選手が財前イズムを知っていることも、アドバンテージになりそうだ。

 現実も直視している。来季トップチーム人件費は、今季の約5億円から半分程度まで圧縮される。来季は緊縮財政の影響を受け、この日移籍が発表されたFW近藤や、引退した中山ら10人の退団が決定。主力が大量流出する状況下での挑戦になる。J1からの降格クラブも高望みはせずに「6位まで昇格の可能性がある。1戦1戦、最後まで粘り強くやる姿を見せたい」と昇格プレーオフ圏を最低目標に挙げた。

 故郷への恩返しの思いが強く、財政難を理解しながらもオファーを受けた。「補強で特別リクエストはしていない。与えられた条件で工夫すれば出来る。イメージはある。あとは選手を見て、いいところを見ながらチームをつくりたい。お世話になったクラブに恩返しをしたい」。財前札幌は、理想を追わない。堅実に、地道に、J1への道を歩む。【永野高輔】

 ◆財前恵一(ざいぜん・けいいち)1968年(昭43)6月17日、室蘭市生まれ。室蘭大谷高から87年に日産自動車(現横浜)入り。94年に柏、96年に札幌へ移籍し、同年限りで現役引退。97~03年は札幌U-18、U-15の監督、コーチを務め、04~06年はトップチームのアシスタントコーチ、07年から再びU-18コーチに復帰した。10年からは福岡U-13の監督を務め、今季はU-18監督。