財前札幌はあわてない。J2札幌は28日、札幌市内の施設で約2時間の練習を行った。始動2週目に入り、この日から財前恵一監督(44)が直接指導を開始。5対5のミニゲームでは、前に攻め急ぐ選手に、じっくりボールを動かしてチャンスをつくるよう指示した。奪ってから素早くゴールまで運ぶのが石崎札幌のベースだったが、財前色は対照的にじわじわと敵を崩していく。

 指揮官がついに動いた。チーム始動の21日から26日までは名塚コーチにまかせ、じっと観察していたが、この日は一変。激しい財前イズムを一気に注入していった。「あわてない、あわてない。動かして顔を出して。何回も何回も動かして。相手を誘って」。攻め急ぎは禁物だ。落ち着いてボールを回し、相手を動かして揺さぶってすきを突く。これが財前スタイルだ。

 石崎監督が指揮した昨季までは、リスクを負ってでも高い位置でボールを奪いにいき、速攻に転じるシンプルさが武器だった。今季は、まずボールを動かし、相手をじらす。指揮官は「自分で何でもやろうとすると上のレベルではボールを失う。危なくなったら、状態のいい選手を探して出す。そうやって回さないとポゼッションできない」と説明した。

 5年目のFW上原は「去年までは、まず早く前に寄せ、それを周りがサポートする。今は無理ならGKまで下げるぐらいボールを大事にするイメージ」と話した。すべてを変えるわけではない。石崎体制で培った守備での奪う姿勢を生かしつつ、財前イズムを的確に融合していく。【永野高輔】