<天皇杯:札幌4-1北海道教大岩見沢>◇7日◇2回戦◇札幌厚別

 ビン来日初ゴール!

 J2札幌が北海道教大岩見沢を下し、3大会ぶりの勝利を挙げた。ベトナム人FWレ・コン・ビン(27)が公式戦初先発。0-1の前半14分にPKで、東南アジア人Jリーガーとして初得点を挙げた。後半9分には右足ループシュートで決勝点、同24分にはFW横野のゴールをお膳立てするなど3得点に絡んだ。リーグ戦では2試合9分と出場機会が少なかったが、初のフル出場でアピールした。

 どうしても点がほしかった。0-1の前半14分、FWフェホがペナルティーエリアで倒されPKを獲得すると、ビンは歩み寄って言った。「札幌でファーストゴールを取るチャンス。蹴らせてほしい」。相手は大学生だったが“ベトナムの英雄”は貪欲だった。「ビンに早く点を取らせたかったから」とフェホ。優しい相棒から譲り受けたチャンスを、しっかり右足で決めスイッチが入った。

 後半9分には、DF松本の左クロスがゴール前でバウンドしたところにジャンプして右足を伸ばし、飛び出したGKの頭越しにループシュートを放ち決勝点を挙げた。さらに同24分にはゴール前のボールを追いかけGKと競り合い、こぼれ球を横野が押し込み、ダメ押しの3点目につなげた。

 ここまで出場したリーグ2戦はすべて途中出場。5分以上出場したことがなく、財前監督は今回の一戦を今後の判断材料に考えていた。初のフル出場で両チーム最多タイのシュート6本を放ち、3点に絡んだ。格下相手とはいえ指揮官は「カウンターでボールを運ぶ速さはすごい。点も取っているしアピールしていたと思う」と及第点を与えた。

 「点を取りたかった。本当にうれしかった。フェホやチームメートに感謝したい」。チームは今日8日から2連休となり、ビンもサッカー漬けの生活に小休止を入れる。8日には札幌近郊に在住するベトナム人同士の交流を支援する「札幌ベトナム交流会」主催のベトナム料理パーティーに招かれている。本来は来日直後の8月10日に参加予定だったが「今はサッカーに集中したい」と参加を延期し約1カ月間、選手寮で日本食を食べ、もがき続けてきた。

 攻撃の選手として、1つの結果が出た。本当の勝負はここからだ。「Jリーグで点を取るのが自分の目標。今日は90分出たけど100%じゃない」。まずは母国料理で充電し、万全の状態でリーグ残り10戦に全力を注ぐ。【永野高輔】

 ◆レ・コン・ビン

 1985年12月10日、ベトナム・ゲアン省生まれ。03年にソンラム・ゲアンでプロデビュー。04年にベトナム代表に選出され、同代表では出場51試合35得点。Vリーグは出場140試合107得点。09年にはポルトガルのレイションイスSCに期限付き移籍し、ベトナム人選手として初めて同国リーグでプレー(出場2試合1得点)。04、06、07年ベトナム年間最優秀選手。171センチ、68キロ。

 ◆天皇杯と札幌

 初出場はJFL時代の96年で1、2回戦を勝ち、3回戦で清水に敗退。最高成績は06年の4強。J2ながら4回戦でJ1の千葉を1-0で破り、5回戦で新潟、準々決勝で甲府とJ1勢を3連破。準決勝でG大阪に1-2で敗れた。04年には準々決勝まで進出も磐田に延長戦の末、敗れた。10年から昨年までは3年連続初戦敗退していた。