<J2:松本1-0愛媛>◇第42節◇24日◇松本

 J1昇格プレーオフ出場権(6位以内)をかけた最終節で「天国」と「地獄」がひっくり返った。4位長崎から8位松本が残り3枠を争い、24日午後0時半に同時キックオフ。負ければ7位の千葉は1点を追う後半ロスタイムに同点とし、昇格圏内に滑り込んだ。逆に直前まで暫定6位に浮上していた松本は7位に沈んだ。12月1、8日の昇格プレーオフには、既に出場権がある3位京都のほか徳島、千葉、長崎が進出する。

 とりスタの時計の針は、もう止まっていた。後半45分が経過。1-2のまま敗れれば、5年連続のJ2暮らしが決まる。そんな「地獄」で千葉がもがいた。ロスタイム2分、MF兵働がこぼれ球に飛び込み、起死回生のミドルシュートをぶち込んだ。0-2の後半36分にはFW森本が決め、残り9分からの大逆転。選手もサポーターも、各地で速報をチェックしていた人も仰天の結末が待っていた。

 その直前、松本は「天国」で朗報を待っていた。J2参入2年目。1万6885人もの観衆が見守る中、前半29分に奪った1点を守り切った。終了の笛が鳴った瞬間、反町康治監督(49)は険しい表情でベンチを振り返った。どうだ-。この時、まだ千葉は負けていた。暫定6位。「いける」。そう思った瞬間、電光掲示板に残酷なスコアが刻まれた。「鳥取2-2千葉」。「うわぁ~」。落胆の声が、北アルプスに囲まれた本拠地にこだました。

 前半15分の千葉の失点が呼び水となったのか、目まぐるしく順位が変動した。その中で、ピッチ内の兵働は「(進出できるか)状況は全く分からなかった。無我夢中でした」と無心だった。一方、外から見る立場の松本反町監督は、千葉への情報を減らそうと、ハーフタイムのロッカーアウトを2分遅らせた。そして、複数の進出条件の中から現実的な(1)千葉の負け(2)徳島の引き分け以下を待った。

 徳島は勝った。千葉の状況が命運を握る中、反町監督は他会場の選手交代から退場者まで試合中に報告させ「今季はいつも途中交代していた兵働が最後まで残っていた。嫌な感じがした」。悪い予感が的中した。

 わずか数分で天国と地獄が入れ替わった。千葉は5位でプレーオフ進出、松本は7位で今季を終えた。続投が決まっている反町監督は「勝ち点1の重みを痛感したが、この世界ではよくあること」。手は尽くしただけに表情の疲労感は色濃かった。【木下淳】