<J1:鹿島1-0甲府>◇第20節◇16日◇カシマ

 18年W杯ロシア大会を狙う日本代表候補が、アギーレファミリー初視察の一戦で輝いた。鹿島MF柴崎岳(22)が開始19秒、35メートルの無回転ロングシュートを決めて甲府に勝利。最近4戦3発で「得点力を備えたボランチ」としてアピールした。チームも3連勝で4位をキープした。

 視察した日本代表のスチュアート・ゲリング新コーチ(40)も驚いたに違いない。鹿島のボランチ柴崎がいきなり度肝を抜いた。開始わずか19秒。センターサークル付近でこぼれ球を拾うと、右足でちょこんと前へ出す。GKの位置を見ると細かい歩幅で助走を加速させ、ゴールから約35メートルの位置で右足を振り抜いた。

 「ボールを押し出すように蹴ればブレる」という無回転のロングシュートは、左にスライドするような弾道でネットに届いた。軌道を読んだ甲府GK荻が反対方向に1歩目を踏み出してしまうほど、柴崎のシュートは鋭く変化し、35メートルの距離があっても触らせなかった。起点となるパスを出した日本代表候補DF昌子も「右にいってからグンと左に曲がった」と証言した。

 持ち味の視野の広さと判断力も詰まっていた。目の前で相手DFからボールがこぼれ、拾うまでの時間は1・1秒。その間に顔を上げた柴崎は3つの選択肢を思い描いた。「パス、シュート、持ち上がってからのスルー(パス)を考えた。自分の左に中村とダビ、右にカイオがいたし、裏にスペースもあったので」。一瞬でピッチを俯瞰(ふかん)した上で「ファーストタッチが良かったので、体の反応に身を委ねた部分もあった」とシュートを選択。あとは、セレーゾ監督が「柴崎の足は宝箱」と絶賛する技術で打つだけだった。

 日本代表のボランチは遠藤が34歳、長谷部が30歳と世代交代が課題とされる。その中で次代を担う男として期待され、日本協会スタッフによると、前日15日のアギーレジャパンの第1回会議で「柴崎」の個人名が挙がったという。それを裏付けるかのように、ヘッド格のゲリング氏が視察に訪れた。同氏は「鹿島の20番?

 個人に関しては話さない。ただ、いい選手は多かった」としか話さなかったが、強烈な印象を残した。

 得点後は、W杯ブラジル大会でコロンビア代表MFロドリゲスが踊ったダンスを披露した。その舞台には日本代表として立てなかったが、中断明け6戦3発、アギーレ監督の就任発表後は何と4戦3発だ。「点の取れるボランチ」として輪郭が固まりつつある22歳は「ロシアは26歳、いい年齢で迎えられる。(アギーレジャパンの)最初から代表に選ばれて、4年間ずっと入りたい気持ちはある」。アギーレ監督には、この男を推薦したい。【木下淳】

 ▼「スミ1」完封勝ち

 鹿島がMF柴崎の開始19秒(公式記録は1分)のゴールだけで完封勝利。開始59秒以内のゴールを守りきっての1-0完封勝ちは、東京が12年5月12日の札幌戦(得点者=MF梶山)で記録して以来、J1史上7度目の珍しいケース。